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トンデモ人事部が会社を壊す

「法律違反してないから解雇OK!」経営陣の短絡思考が組織を壊す

山口 博
2016年6月14日
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「不適切ではあるが、法律違反ではない」ので問題ない――このような論調が、しばしばまかり通っている。実は、この論調、ビジネスの世界でも、よく用いられている。そして知らず知らずのうちに、この見解をとることの違和感が麻痺してしまうケースが多発しているのだ。

「法律で禁止されていないので…」
解雇実施は問題ない!?

 「法律違反ではないので、問題ない」――こう言い切ることがもたらした、私が直面したもっとも深刻なケースは、外資系製造業W社の事例だ。W社グローバル本社が、日本法人営業部門の従業員解雇を数十名規模で実施するように指示をした。業績回復を図るためだ。解雇を指示する前に、グローバル本社人事担当者は、日本の顧問弁護士に次のように確認している。「日本法人が従業員を解雇することは、日本の法律で禁じられているのか?」

「法律にさえ違反していなければOK」という考え方は一見、もっともなようだが、しばしば驚くほど愚かな経営判断を下してしまうことにもなりかねない

 これに対して、顧問弁護士は次のように回答した。

 「法律により禁じられているわけではありません。労働基準法は『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合...無効とする』と、一定要件のもとに無効となる場合があると定めているに過ぎず、解雇を実施できないと定めているわけではありません。整理解雇の4要件は、法律による制約ではなく、判例です。整理解雇の4要件を踏まえた上で、訴訟となるリスクを鑑みて、それでも実施すると経営判断するのであれば、実施はできます」

 この弁護士の見解を踏まえて、グローバル本社は日本法人へ、解雇の実施を指示したのである。グローバル本社は、もちろん日本において解雇を実施することのハードルが高いことを認識している。しかし、そのハードルを超える手立てや手順を取りさえすればよい。日本の法律で禁じられていないので、問題はない。従って、実施すべきであるというロジックである。

 弁護士の見解も、それを踏まえたグローバル本社のロジックも、間違いではない。解雇を実施するには要件を満たすことが必要だが、法律で解雇の実施そのものが禁じられているわけではない。いかに高いハードルがあろうとも、訴訟で負けるリスクがあろうとも、それを実施するかどうかは最終的に経営判断だということも、然りである。

 では、法律に違反していないから、ロジックが通っているから、問題ないかといえば、ほとんどの人が問題だと思うに違いない。法律に違反していないにしても、解雇をすれば求心力は著しく低下するし、組織は弱体化して立て直すまでに甚大な時間とコストを要する。それほどまでのリスクをおかしてでも、解雇の実施を継続しなければならない経営状況なのか、その観点から最適な選択肢だったと言えるのかという問題だ。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

サラリーマンの会社人生のカギを握る人事部。しかし近年、人事部軽視の風潮が広まった結果、トンデモ人事部が続々と誕生している。あっと驚く事例をひもときながら、トンデモ人事部の特徴や、経営陣がすべき対処法などを探っていく。

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