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小さな会社とサラリーマンのための 社会保険の授業
【第7回】 2016年6月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
キャッスルロック・パートナーズ [著者]

7月昇給の会社は「アタマがいい」理由:昇給と社会保険料の関係

「社会保険料ってなんでこんなに高いの?」
「安くできる方法ってないの?」
「どんな時に、どんな給付がもらえるの?」
「細かい話はいいから、重要なことだけ知りたい!」


そんな社会保険にまつわる素朴な疑問や不満を、ストーリー形式で解決していく本連載。

今回は、「昇給のタイミング」と社会保険料の関係について、サラッとお伝えしていきます。

佐藤さん:松島先生、これまでのレクチャーを通して、社会保険料のしくみを知らないことで損しているケースがたくさんあることがわかりました。

松島先生:たしかに、しくみを知れば、社会保険料を抑える工夫を考えることができますからね。

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(前回までの記事はこちらからどうぞ)
第1回 社会保険料を「払い損」しないための知識:民間の生命保険と社会保険はどう違う?
第2回 給与明細の「社会保険料」の額って高過ぎじゃない?と思ったら読む記事
第3回 手取りが減った!と思ったら「この表」を見よう
第4回 6月に残業する人が「損」する理由
第5回 年収726万円以上の人の「特権」:ボーナスと社会保険料の関係
第6回 「介護離職」を救う助成金を見逃すな!
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佐藤さん:それで、たしか以前、「社員の昇給は7月がいい」とかおっしゃってましたよね?

松島先生:ああ、その話は、標準報酬月額の決定と、決定された保険料を天引きするスケジュールに理由があるんですよ。

 健康保険と厚生年金保険の保険料を決めるのは、大きく分けて給与の額(=標準報酬月額)と、賞与の額(=標準賞与額)です。このうち、標準報酬月額を決定・改定するケースは次の4つのパターンがあります。

◎入社したとき(資格取得時決定)
◎大幅な昇給や降給があったとき(随時改定)
◎年1回定期的に(定時決定)
◎育児休業などから復帰したとき(育児休業等終了時改定)

もっとも一般的なのは「定時決定」で、原則として7月1日現在、被保険者である人全員が対象になります。

 定時決定では、4月から6月の報酬の平均を計算し、これを7月上旬に年金事務所に届け出る決まりです。そうすると9月に標準報酬月額が改定され、10月から改定された標準報酬月額による保険料の天引き(控除)が始まります。

 つまり、10月から翌年9月まで給与から控除される保険料は、4月から6月の給与(報酬)の平均で決まるわけです。

佐藤さん:ということは昇級を7月にすると、昇給した給料で保険料が天引きされるのは……翌年の10月からになるってことですか?

松島先生:そういうことですね。もちろん、保険料アップを1年先送りしているだけですが。

佐藤さん
:でも、7月から9月までは前々年度の保険料で、10月から翌年9月までは前年度の保険料ってことでしょ?しかも、毎年繰り返される。これはおいしい!

梅田先生:まあ、長期的に見ればあまり関係ないとも言えるけど、当面は安くなるよね。そういうふうに考えればいいでしょう。

松島先生
:そうですね。このとき注意点が1つあります。「随時改定」のルールに関係することなんですが……。

標準報酬月額を変更しなければいけないタイミングがある

 標準報酬月額は、報酬月額の大幅な変動があったときは、年金事務所に届け出て、変更しなければならないことになっています。

 条件は、下記の3つをすべて満たす場合です。

(1)基本給などの固定的賃金が変動している
(2)所定労働日数から欠勤日数などを引いた「支払基礎日数」が17日以上ある
(3)変動した月から3ヵ月間の報酬の平均が、変動前の標準報酬月額と比べて保険料額表で2等級以上の差がある


 これが「随時改定」です。佐藤さんが新たに社会保険業務を担当することになり、けっこうな額の手当が付いて2等級アップした、などの場合も該当するわけです。

佐藤さん:社長、僕に手当はつくんですか?

田中社長
:もちろん。だからキミの標準報酬月額も上がって、保険料も上がるよ。

佐藤さん
:うーむ、喜ぶべきか悩むべきか……。

梅田先生
:それは喜ぶべき。手取りが増えるんだから。セコいこと考えるとストレスになるよ。

松島先生
第5回でも紹介した保険料額表をもう一度見てください(下表)。いちばん左に「等級」ってあるでしょ?これが2等級以上アップすると、7月の昇給でも随時改定の届け出をして標準報酬月額を変更しなければいけないわけです。

佐藤さん昇給は7月、1等級以内、ってことですね。

梅田先生
:ともかくこの料額表とにらめっこすると。細かい表だけど、ここにすべてが書かれていると言ってもいいよね。50等級とかまであるけど……。

松島先生
:ちなみに、会社の賃金規程に「4月昇給」などと定めがある場合は、規程の変更も必要ですから注意してくださいね。

 随時改定は、報酬月額の大幅な変動があった月以降、3ヵ月の平均を計算して、先ほど挙げた(1)から(3)のすべての条件に合った場合に行います。標準報酬月額の改定は4ヵ月めからとなり、5ヵ月め支給分の給与から天引き額が変更されるわけです。

 なお、少し話は横道にそれますが、入社したときの「資格取得時決定」では報酬月額の平均が計算できないので、基本給に手当などを加えて報酬月額とします。残業手当も、他の従業員を参考にするなどして見込額を加えなければなりません

 育児休業などから復帰したときの「育児休業等終了時改定」では、休業が終了した日の翌日が属する月から3ヵ月間の報酬を平均し、4ヵ月めに標準報酬月額を改定、5ヵ月めから保険料控除額が変更になります。

(次回に続く)

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キャッスルロック・パートナーズ [著者]

公認会計士・税理士・社会保険労務士・司法書士がパートナーを組んで設立された合同事務所。中小企業の会計・税務、労務、法務のバックオフィス機能を持つ。専門家がタッグを組むことで幅広い経営コンサルティングを実施。クライアントに大きな支持を得ている。


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