「社会保険料ってなんでこんなに高いの?」
「安くできる方法ってないの?」
「どんな時に、どんな給付がもらえるの?」
「細かい話はいいから、重要なことだけ知りたい!」
そんな社会保険にまつわる素朴な疑問や不満を、ストーリー形式で解決していく本連載。
今回は、「ボーナスと社会保険料」の意外な関係について、サクッとお伝えしていきます。
佐藤さん:この前は、残業代と保険料に関するレクチャーをありがとうございました。保険料の額は変わらないものだと思っていたけど、しくみを知ると、工夫の余地があるんですねぇ。
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(前回までの記事はこちらからどうぞ)
第1回 社会保険料を「払い損」しないための知識:民間の生命保険と社会保険はどう違う?
第2回 給与明細の「社会保険料」の額って高過ぎじゃない?と思ったら読む記事
第3回 手取りが減った!と思ったら「この表」を見よう
第4回 6月に残業する人が「損」する理由
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松島先生:保険料額表を見ていると、ほかにも保険料でトクする方法がいろいろ見つかりますよ。たとえば、標準報酬月額の等級を決める報酬月額は、けっこう幅がありますよね。
佐藤さん:ほんとだ。1万円から、高いほうでは6万円くらいの幅がありますね。
報酬月額「1円」の違いで
保険料年間6万6000円の差になるケース
松島先生:つまり、1円の違いで等級が上がったり下がったりするってことです。たとえば報酬月額28万9999円だと、標準報酬月額は28万円、健康保険21等級、厚生年金17等級です。報酬月額が1円上がって29万円になると、標準報酬月額30万円、健康保険22等級、厚生年金18等級となります。
佐藤さん:そうすると保険料はどうなるんですか……?
保険料額表で3ヵ月の平均をあてはめる「報酬月額」の欄は、1万円から6万円の幅で標準報酬月額を決めるようになっています。そのため、報酬月額1円の違いで等級が上がり、保険料が上がることがあるのです。
佐藤さんの場合であてはめてみると、健康保険21等級の保険料は全額で2万7888円、厚生年金17等級は4万9918円で、合計7万7806円。
一方、健康保険22等級の保険料は全額で2万9880円、厚生年金18等級は5万3484円、合計で8万3364円となります。なんと報酬月額1円の違いで、月額5500円以上、年額では6万6000円以上の差になります(協会けんぽ・平成28年度・東京都の例)。
松島先生:報酬月額が等級の下限に近いのは負担割合が大きい、つまりソン。上限に近いほどトクをすると言えるかもしれませんね。
佐藤さん:上限に近いってことは、給料はその分多くもらって保険料はそのままってわけか!
松島先生:報酬月額27万円の人が、1万9999円昇給して28万9999円になっても、保険料は同じですからね。
佐藤さん:なるほど。要は1円刻みで上がったり下がったりするんじゃなくて、段階的だと。
松島先生:そういうことです。
保険料を抑える「ちょっとした工夫」
報酬月額を等級の上限に近づける方法としては、賞与の額と調整することが考えられます。賞与は標準報酬月額による計算と違い、1000円未満を切り捨てた標準賞与額に直接、保険料率を掛ける計算方法です。
ですから、賞与の一部を減らしてその分を給与にあて、等級の上限に近づければ、賞与の保険料はその分下がり、一方、給与の保険料はそのままとすることができます。
松島先生:まあ現実には、残業手当が毎月変わったりして、報酬月額を1円単位でコントロールすることはむずかしいですけどね。
佐藤さん:でも、天引きされる保険料は変わらずに、2万円近く給料が上がることもあるわけでしょ?無視できませんよ。
松島先生:少なくとも、標準報酬月額のしくみを知って、意識しておくことが必要ですね。それともう1つ。保険料額表の等級には「上限」があります。これを利用すると……。
年収726万円以上の人の特権とは?
厚生年金保険料の等級は、30等級、標準報酬月額62万円が上限になっています。これ以上は、いくら給与が上がっても厚生年金保険料は上がりません。
標準報酬月額62万円の報酬月額は、60万5000円以上となっています。ですからその12倍、726万円以上の年収がある人は、賞与をなくして、その分を毎月の給与でもらったほうが厚生年金保険料の分トクです。
たとえば年収900万円の人が給与で600万円、賞与で300万円もらっていたとします。厚生年金保険料の年額は全額で約160万4500円。これに対して900万円すべてを給与でもらうと約132万6400円、年間で28万円近い差になるのです。
(次回に続く)