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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

英EU離脱で「英連邦」が超巨大経済圏として出現する

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第134回】 2016年6月21日
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英国のEU離脱問題は、キャメロン首相(右)に対してボリス・ジョンソン前ロンドン市長が仕掛けた「権力闘争」の側面もある Photo:Guy Bell/Camera Press/Aflo

 英国の「EU離脱」の是非を決める「国民投票」が23日に実施される。当初、「EU残留派(以下「残留派」)」が有利と見られていたが、予想に反して「EU離脱派(以下「離脱派」)」への支持が大幅に伸びた。各種世論調査では、離脱支持が残留支持をわずかに上回るようになった。残留派・離脱派の対立は過熱し、遂に残留派である労働党の女性下院議員ジョー・コックス氏が、「ブリテン・ファースト!」と叫ぶ、離脱派とみられる男に銃で撃たれ、死亡する事件が起こってしまった。

前ロンドン市長がキャメロン首相に挑んだ
「権力闘争」としてのEU離脱

 離脱派への支持が大幅に伸びた要因は、保守党下院議員で、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏がEU離脱への支持を表明し、離脱派のキャンペーンの中心となったからだろう。ジョンソン氏は、ボサボザのブロンドのヘア・スタイルと聴衆の心を掴む巧みな演説で英国屈指の人気政治家であり、デイビッド・キャメロン首相のライバルとして、次期首相候補とも呼ばれてきた。

 最近までロンドン市長を務めてきたジョンソン氏は、世界中の企業をロンドンに誘致することに取り組んできた(本連載第71回・P.5)。規制緩和や構造改革に熱心とみられたジョンソン氏が突如離脱派への支持を表明したことは、英国内に強烈なインパクトを与えた。与党保守党内からは、閣僚からも離脱派が多数出て、残留派のキャメロン首相・オズボーン財務相らと対立し、分裂状態となった。現在では、330人の保守党下院議員のうち、100人余りが離脱支持者だと言われている。

 英国のEU離脱は、日本では世界経済への影響という観点から論じられることがほとんどだ。だが、これには英国首相の座を巡る権力闘争という側面がある。キャメロン首相は、2015年5月の総選挙で勝利を収め、さらに2020年まで5年間の首相任期を手に入れた。2014年にスコットランド独立の是非を問う住民投票を勝ち抜いた(第90回)。財政再建・構造改革を軌道に乗せた経済財政政策へも高い評価を得た(第131回)。そして、イングランド独立党などナショナリズムの台頭をも抑えたことで、キャメロン首相の権力は盤石となったように思えた(第106回)。

 また、キャメロン首相の相棒として、財政再建を軌道に乗せたジョージ・オズボーン財務相の評価も高まった。オズボーン財務相は中国との経済関係強化も主導し、「事実上の外務相」とも呼ばれるようになり、首相の後継者として一番手と認識されるようになった。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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