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メガバンクが再生ファンド
実効性にまつわる二つの疑問

週刊ダイヤモンド編集部
2010年9月13日
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 三井住友銀行と三菱東京UFJ銀行、日本政策投資銀行、そして三菱商事の4社が手を組んで、事業再生ファンドの設立を検討していることがわかった。実現すれば「財閥グループの壁を越える、業界でも初めての取り組み」(三菱東京UFJ関係者)となり、関係者の注目を集めている。

 このファンドは当面、銀行3行が100億円ずつ、三菱商事が数十億円出資して、合計300億円強の規模で立ち上げ、将来的に1000億円規模にまで拡大させる方針だ。

 自己資本が薄く、リストラや新たな設備投資が実施できない上場企業や売上高1000億円規模の企業を対象に、一つの案件につき50億~200億円程度の出資を想定している。

 狙いは「財閥グループをまたいだ企業再編」(三井住友関係者)だ。
三井住友や三菱東京UFJは互いに、シナジー効果を生みそうな企業を紹介し合い、ビジネスマッチングや再編などを促す。従来は同じ財閥グループ内でしか相手を探せなかったが、その枠を越えて選択肢を広げようというわけだ。

 ところがこのファンド、出資者が入れ替わり立ち替わりするなど、足元がおぼつかない。

 もう一つのメガバンク、みずほフィナンシャルグループ(FG)はファンドへの参加について、「ニュートラルの立場」(みずほFG関係者)としている。しかし、じつは当初、出資者に名を連ね、出資比率の案まで出していた。三井住友海上火災保険なども、以前は参加予定だったのに名前が抜け落ちているなど、なんとも落ち着かない。

 背景には、二つの大きな問題が横たわる。一つは、本当に財閥グループの枠を越えることができるかだ。「互いに自分の財閥グループばかり便宜を図り、すぐに協力関係が瓦解してしまうのでは」(地方銀行関係者)と、実現可能性に疑問の声が上がっているのだ。

 もう一つは、再生企業へのカネの貸し手である銀行が、ファンドの出資者でもあるため、利益相反の危険性をはらんでいることだ。

 「不良債権の“飛ばし”と言われては困る」(メガバンク関係者)ため、持ち込む案件については、疑惑を持たれないような条件設定、透明性の確保が必要となり、ハードルが高いのだ。

 業界再編や産業構造の変化に刺激を与え、日本企業の競争力強化につながる可能性があるとして、業界内では一定の評価で受け止められている。

 とはいえ長い歴史の中で形成されてきた財閥の壁は、きわめて厚い。銀行のエゴや財閥色が顔をのぞかせれば、途中でファンドが空中分解を起こす危険性もあり、予断を許さない。銀行の本気度が試される。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

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