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英国離脱ならEU崩壊ドミノの「最初の一押し」か

仲野博文 [ジャーナリスト]
2016年6月23日
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EU(欧州連合)からの離脱の賛否を問う国民投票がイギリスで23日に実施される。投票結果は遅くても翌日には発表される予定で、イギリスがEUから離脱してしまう可能性も夢物語ではなくなった現在、もし現実となればヨーロッパにドミノ現象を起こすきっかけになる可能性は高い。すでにヨーロッパ全体でもEUの役割に懐疑的な人が増える中、1つのヨーロッパという理想はイギリス離脱をきっかけに崩れ始めてしまうのだろうか。(ジャーナリスト 仲野博文)

鬱積する離脱派の不満
現役議員殺害事件も世論に影響

 イギリスが2つに割れている。EUに残留するべきか、もしくはEUと袂を分かつべきか。長きにわたって続けられてきた答えの出ない議論だが、23日に実施される国民投票によって、ついに答えが導き出される。

 「残留派」と「離脱派」。どちらの言い分にも一理あるものの、離脱派の主張のベースとなっているのは、現在のEUの制度がイギリス国内の経済や雇用にプラスの影響を与えていない現状だ。イギリスにやってくる移民は年間36万人近くに達しており(EU件加盟国出身者と非加盟国出身者が、それぞれ約18万人程度)、移民に雇用を奪われていると考えるイギリス人は少なくない。残留派のキャメロン首相は、イギリスにやってくる移民の数を年間10万人程度に制限するというプランを打ち出したが、実現性も実効性も未知数だ。

 また、巨額の分担金を毎年EUに支払っているにもかかわらず、EUはイギリスに対して何もしてくれない、といった思いが離脱派の間に存在する。英テレグラフ紙は昨年7月8日、2015年度にイギリスが支払う分担金が約104億ポンド(約1兆5000億円)に達し、今後数年にわたって当初の試算よりも多く支払うことになると報じた。EUがイギリスに対して使う予算は、イギリスがEUに対して支払う分担金の半分以下となっており、難民問題への対応でさらなる分担金を要求されることに憤慨するイギリス人は少なくない。

 残留か離脱かをめぐる議論が沸騰し、国民投票まで残り1週間となった16日の午後には、イギリス中部のリーズ近郊でEU残留を訴えるジョー・コックス下院議員が、地元の有権者らと対話中に殺害されるというショッキングな事件が発生した。

 容疑者として逮捕された男性は精神疾患で医療施設への通院歴もあったと報道されているが、イギリスや南アフリカ、アメリカの極右組織とのつながりも指摘されている。コックス議員は難民の受け入れにも積極的な姿勢を示していたが、殺害の動機には依然として不明な点が多い。コックスさんの死が世論に影響を与えたのかは不明だが、事件直後の18日に発表された世論調査では、複数の調査で残留派が離脱派を数ポイントリードする状況となった。

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仲野博文 [ジャーナリスト]

甲南大学卒業、米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2007年冬まで、日本のメディアに向けてアメリカの様々な情報を発信する。08年より東京を拠点にジャーナリストとしての活動を開始。アメリカや西ヨーロッパの軍事・犯罪・人種問題を得意とする。ツイッター:twitter.com/hirofuminakano

 


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