経営 X 人事

経営にもイノベーションが必要である<2>

ゲイリー・ハメル/ロンドン・ビジネススクール 客員教授

  いわゆる「マネジメント2.0」ですね。箇条書きにされると、「言うまでもない」「何をいまさら」と思ってしまいますが、一つひとつ見てみると、これまで長らく議論されてきた、古くて新しい課題ばかりです。

 そうでしょう。大半の人々は、いまだ官僚制が支配するマネジメント1.0の世界の住人なのです。私が彼らに問いかけ続けているのは、企業のみならず、多くの組織に見られる「ネオ封建主義」とでも呼ぶべき、非生産的な上下関係を今後も続けていくのか、ということです。

 2011年11月、私は「まず、マネジャー全員、クビにしよう」という、少々挑発的なタイトルの論文を『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に寄稿しました(*)。その中で取り上げたのが、カリフォルニア州ウッドランド市にあるモーニングスターカンパニー――この社名には、明けの明星(金星)、転じて「先駆者」という意味が込められています――という、トマト加工を生業としている会社です。平均成長率が1%前後という業界にありながら、過去20年間、売上高と利益において2桁成長を続けています。

 モーニングスターは、まさしくマネジメント2.0の実践者です。その一端をご紹介しましょう。

上司なる者はいっさい存在しない。

従業員は職場の仲間たちと話し合って、各人が受け持つ責任や仕事を決める。

全員に決済権限が与えられている。

仕事に必要なツールは、各人自分で調達しなければならない。

肩書きがない。したがって、昇進や昇格もない。

仲間の判断に従って、給料が決まる。

 あなたのこの論文を読んで、モーニングスターに大変興味を抱き、ちょっと調べてみました。CEOのクリス・ルーファーは、世の中は民主主義が当たり前なのに、なぜ企業組織は封建主義なのか、とずっと疑問に思っていたそうですね。そこで、「セルフマネジメント」の考え方を導入し、人と人が互いに尊敬し、ともに働き、素晴らしい成果を生み出すためのルールを考え出しました(図表2「モーニングスターの『働く仲間に関するルール』」を参照)。そして2008年、モーニングスター・セルフマネジメント・インスティテュートを立ち上げ、啓蒙活動を展開しています。

図表2 モーニングスターの『働く仲間に関するルール
拡大画像表示

 

 

 

 

 

 

 彼は、この揺るぎない信念を具現化するために、極めてプラグマティックに行動しています。セルフマネジメントという経営哲学を掲げるだけでなく、 現場の人たちに、NPV(正味現在価値)、IRR(内部収益率)、ROI(投資収益率)などの会計リテラシーを教えると同時に、経理・財務情報を包み隠さ ず公開しています。

 たいていの企業が能力開発には積極的ですが、社内情報の全面的な開示や共有には消極的です。わからないではないですが、「マル秘(コンフィデンシャル)」情報が多すぎるのではないでしょうか。これも、官僚制が元凶です。

* Gary Hamel, “First, Letʼs Fire All the Man-agers,” Harvard Business Review, Decem-ber 2011.

第3回は2016年8月4日(木)公開の予定です。
  • 1
  • 2

経営 X 人事 特集TOPに戻る

 


「トップ・マネジメントの教科書」人と組織を動かすリーダー論

組織メンバーの自発・自律的な自己変革によって会社をよくしたいと思うならば、アメとムチ、命令と統制(コマンドアンドコントロール)など時代遅れの経営慣行――心理学や社会学の実験が証明しているように、これらは逆効果である――を排し、21世紀にふさわしいマネジメントを発明すべきである。それは、経営の意志の問題にほかならない。

「「トップ・マネジメントの教科書」人と組織を動かすリーダー論」

⇒バックナンバー一覧