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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

イギリスのEU離脱は経済的に合理的な選択だ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第68回】 2016年6月30日
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 「イギリスのEU離脱は経済的に不合理な決定であり、世界経済を混乱させる望ましくない決定だ」とされることが多い。しかし、この議論は大いに疑問だ。とくに、金融活動について、イギリスの離脱には十分な理由がある。

大勢だった残留支持の論調
離脱で短期的には世界経済が混乱

 イギリスのEU離脱問題に対して、世界の主要な報道機関のほとんどは、残留が望ましいとしていた。ユーロ参加には反対だったイギリスの経済誌「フィナンシャルタイムズ」(FT)も、今回は社説で「残留に1票を投じるべきだ」としていた。

 また、イギリス財務省、イングランド銀行、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)等のさまざまな機関が、こぞって離脱のコストを指摘していた。

 短期的に見れば、イギリス離脱によって世界経済が混乱することは避けられない。なぜなら、それは突然の体制変更をもたらすからだ。

 以下に述べるように、イギリスとEU加盟国との関係がどうなるかは、今後決められるさまざまな取り決めに依存している。ところが、これらがどうなるかが現時点でははっきりしない。それが不確実性を強めている。現在の世界経済の動揺は、これによるものだ。

 さらに、離脱派は、最後の段階で、移民問題に焦点を当てた主張を展開した。これが労働者や一般市民の共感を呼び、離脱派の勢力が増したことは無視できない。

 そしてこれが、「移民を受け入れたくないイギリスの身勝手な決定」という良識派からの批判を強めた。

イギリスの離脱の根底には
巨大官僚組織と規制への反発がある

 こうした状況下で、「イギリスの離脱には、経済的な観点から見て合理的な理由がある」と指摘すれば、「何とへそ曲がりのことを言うのか」と批判されるだろう。

 しかし、それを認識することは、大変重要だ。なぜなら、「イギリスの離脱が経済的に不合理」との考えは、前提に基本的な問題があるからだ。

 この問題の根底には、「巨大官僚組織による規制の強化と、それに対する反発」という問題が横たわっているのである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

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