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モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

英EU離脱で日の丸自動車産業に立ち込める観測不能の暗雲

佃 義夫 [佃モビリティ総研代表]
【第33回】 2016年7月1日
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急激な株安・円高トレンドに騒然
英国EU離脱が日本車各社に与える影響

英国のEU離脱で、日本の自動車産業の欧州戦略はどう変わるのか。写真は2012年、英国サンダーランド工場で2033年から新たな中型モデルの生産開始の発表を受け、キャメロン英首相が日産本社を訪問した際のもの Photo:NISSAN

急激な株安・円高トレンドに騒然
英国EU離脱が日本車各社に与える影響

 英国の欧州連合(EU)離脱に、日本の自動車産業は不安を募らせている。1つは、株安・円高トレンドに拍車がかかり、業績低下圧力がかかるのではないかという不安、もう1つは欧州市場全体への足がかりを考えるなかで、英国での現地生産・基地化戦略の再構築を見極めなくてはならないという不安だ。自動車メーカーは、こうした両面での成り行きを注視していかねばならない事態となっている。

 リーマンショックの再来か――。英国のEU離脱決定直後から、こんな懸念が飛び交った。EU離脱の是非を問う国民投票は、離脱派が残留派を上回った6月24日の投票結果を受けて、実体経済に影を落とした。

 この欧州発の暗雲が立ち込めると、即座に日本の金融市場も急激な株安・円高へと反応。特に為替市場は、一時90円台をつける円高になったほど。これは、2008年9月に米国の投資銀行・リーマンブラザースの破綻が引き起こした世界同時不況、いわゆるリーマンショックに匹敵する衝撃だという見方も出た。

 つまり、英国がEUの前身であるEEC(欧州経済共同体)から40年以上も加盟してきた欧州単一市場から離脱することは、欧州全体の混乱と英国自体の分裂懸念を引き起こし、世界経済に大きな波紋を投げかける可能性があるということなのだ。特に英ポンドの下落によって円高が進むと、トヨタをはじめとする日本車メーカー各社の業績下振れに拍車をかけることになる。

 また、5億人を抱える単一欧州市場への足がかりとして英国へ重点的に投資してきたトヨタ、日産、ホンダといった日本車大手は、今後の離脱交渉の行方を見極めながら戦略の再構築を進めなければならない。最悪の場合、英国での生産から撤退し欧州大陸への全面展開を図るなど、それが大きな戦略転換シナリオにも繋がることもある。

 英国は、その構成国がラグビーやサッカーなどのスポーツの世界で互いに競い合っていることからもわかるように、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国で構成される連合王国である。

 正式には「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」という名称の国家を、我々は通称で英国、あるいはイギリスと呼んでいる。欧州において大陸のドイツ、フランスの盟主国に対抗する存在が、「大英帝国」と言われた英国なのである。EUの統一通貨がユーロであるにもかかわらず、英国が自国通貨のポンドを維持し続けてきたことは、EUにおいて独自の位置づけを確保しようとする気持ちの表れだろう。

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佃 義夫[佃モビリティ総研代表]

つくだ・よしお/1970年、創刊86周年(2014年2月時点)の歴史を持つ自動車産業日刊専門紙『日刊自動車新聞社』入社、編集局に配属。自動車販売(新車・中古車)・整備担当を皮切りに、部品・物流分野を広域において担当した後、国土交通省・経済産業省など管轄官庁記者クラブ、経団連記者クラブ(自工会分室)と、自動車産業を総合的に網羅し、専任担当記者としてのキャリアを積む。その後、該当編集局内における各分野のデスク・論説担当編集局次長を経て、出版局長として自動車産業オピニオン誌『Mobi21』を創刊。以降、取締役編集局長・常務・専務・代表取締役社長を歴任。45年間の社歴全域で編集・出版全体を担当、同社の「主筆」も務める。日刊自動車新聞社を退任後、2014年に「佃モビリティ総研」を立ち上げ、同総研代表となる。


モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

「自動車」から「モビリティ」の時代へ――。クルマ業界が変貌を遂げつつあるなか、しのぎを削る自動車各社。足もとで好調を続けるクルマ業界の将来性と課題とは、何だろうか。日本の自動車産業・クルマ社会をウオッチしてきた佃義夫が、これまでの経験を踏まえ、業界の今後の方向・日本のクルマ社会の行方・文化のありかたなどについて、幅広く掘り下げ提言していく。

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