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社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

人の死すら悪用する知能犯!!
超巧妙な保険金詐欺事件の真実
社員や家族の命の尊厳はどうなったか?

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表],白井邦芳 [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]
【第10回】 2010年9月29日
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親が知らない息子の秘密!

 白髪まじりの頭髪に肩を丸め、いかにも気の弱そうな、痩せた初老の男が斎場の門をくぐって行った。突然の交通事故で大学生の息子を亡くし、うちひしがれた両親が、次々に来る弔問客にその都度丁寧に挨拶している。男も静かに参列し、順番を待ち、焼香した。

 男は焼香が終わると、しばらくその場に身を置き、葬儀の様子を見守っていた。列もなくなり、ほとんどの弔問客は奥座敷で亡くなった若者の思い出を語らいながら、出された料理に箸を伸ばしている。

 男は、突然動き出し、真っ直ぐに両親に歩み寄って、母親に耳打ちしたあと、胸元から何かを取り出して渡した。母親は肩をふるわせながら涙し、父親は、何度も男に頭を下げている。

 男によれば、この両親の息子は、両親に何かプレゼントを買ってあげたいとの思いから、この男が社長をやっている会社で、アルバイトとして1週間前から働いていたという。びっくりさせたいと考えていた息子は、当然、両親にはアルバイトの話をしていない。

 男の会社は○○学習センター群馬支部で、著名な学習センターのフランチャイズ店である。群馬県の各拠点にある教室で多くの学生に勉強を教えているが、その教材をほぼ毎日バイクで、各拠点の教室に運ぶアルバイトを雇っている。

 亡くなった息子は、このアルバイトとして採用され、昨日交通事故で不運にも亡くなってしまった。男は1週間分のアルバイト代をこの息子に代わり、香典とともに両親に渡しに来たのだった。両親は男から、親孝行な息子の話を聞き、涙することになった。

 男は、息子の会社の登録を抹消したいので、書類に判子を押してほしいと母親に頼み、内容もよく読ませないまま、紙の下にある捺印場所に押印させた。書類を確認した男は、きびすを返すと、一度も振り返らず、足早に斎場を出て行った。

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小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。

白井邦芳(しらい くによし) [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]

AIU保険会社及びAIGグループ在籍時に数度の米国研修・滞在を経て、企業の危機・不祥事・再生に関するコンサルティングに多数関わる。2350事例にのぼる着手案件数は業界屈指。2009年から現職。リスクマネジメント協会評議員、日本法科学技術学会正会員、経営戦略研究所外部専門委員、著書に「ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング」(中央経済社)等がある。


社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

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