大安吉日だった9月29日は、任天堂関係者にとって悪夢のような一日になった。満を持して開催したはずの発表会中に、「ニンテンドー3DS」の誤報が元で株価が乱高下。そして、円高に加えて、3DSの発売日が来年の2月26日に決定したことを受けて、2011年3月期の連結売上高を1兆4000億円から1兆1000億円に、純利益を2000億円から900億円にそれぞれ下方修正すると発表、翌日も株価を下げた。①ソフトメーカーの体力不足、②任天堂ハード市場のバランスの悪さ、③外部環境の悪化、という三重苦を抱えた任天堂は、将来も業界のリーディングカンパニーであり続けられるのか。

 任天堂の岩田聡社長は9月29日、同社のプレス向け発表会で、新型携帯用ゲーム機「ニンテンドー3DS」の日本での発売を2月26日、価格を2万5000円と発表した。ところが、その直後株価が急落。2時半過ぎには2万5000円まで急伸した株価が、3時には2万3000円まで急降下した。

 この状況を会場内で耳にしたある業界関係者は「3DSの値段が高いということなのだろうか」と心配顔をしていた。確かに、マイクロソフトが11月20日に発売する、コントローラなしで遊べる家庭用ゲーム機「Xbox 360 4GB + キネクト(Kinect)」が2万9800円であることを考えると、「携帯ゲーム機に2万5000円は出せない」と考える人もいるだろう。

 だが、この株価乱高下劇の原因は違っていた。実は2時半の時点で株価が急伸したのは一部報道が、「スーパーマリオ25周年記念バージョン ニンテンドーDSi LL」の「10月28日発売、価格は1万8000円」を3DS情報として誤報したことで、機関投資家などの大量の買い注文が入ったためだという。そして、岩田社長が発表会のステージ上で正式価格と発売日を発表した段階で、急落した。株価が下がるにしても上がるにしても、市場が誤報に振り回されたことに対して、任天堂関係者はやりきりない思いなのではないか。

 今回の「ニンテンドー3DS」に関しては、報道合戦が繰り広げられていた。たとえば、公式発表2日前の27日にはドイツの日刊紙が「日本の発売日は11月11日、価格は200ユーロ(約2万2800円、1ユーロ114円計算)」と報道。ハード同時発売ソフトまで記載する手の込みようだった。ただし、この誤報の情報源は解雇を不服とする元開発系業界関係者という話もあるので、日刊紙側を責めるのは酷だろう。

 ちなみに、ゲーム業界の場合、新ハードなどの機密情報は他業界と比較すると漏れやすい。たとえば、ソニーは携帯ゲーム機「PSPgo」の本体写真が事前に流出するなど、通常のビジネスシーンではありえない状況が起きた。3DSに関しては、事前報道が全部間違っていたことを考えると、任天堂は今回の情報管理に関しては面目を保ったと言えるだろう。