今回も前回に引き続き、主に戦略、組織変革、リーダーシップなどを社会人に対して教える、中央大学大学院教授の磯村和人さん(51)に取材を行った際のやりとりを紹介しながら、「学歴」について考えたい。

 磯村さんは高校に進学することなく、大検(大学入学資格検定試験)を経て京都大学に進んだ。その後大学院博士課程に進み、研究者としての人生を歩んできた。これまでの稀有な経験を通じて、学歴やその価値、さらに会社員などのキャリア形成や人事のあり方などについて研究をする。

 磯村さんは、「日本企業では、キャリア形成において社員間で差がつきやすく、それに不満を持った人の一部が、はるか以前に身につけた学歴を持ち出す傾向があること」を指摘する。そして、「学歴にルサンチマン(根強い恨み)を持つ人が暴れないようにすることが必要」とも説く。

 読者諸氏は、前回、今回の2人のやりとりから何を感じるだろうか。


本人は「負けていない」と思っても
周囲から見るとやっぱり負けている

「学歴ルサンチマン社員」が暴れ出しかねない日本企業の死角日本企業には、自分の処遇に納得できない「学歴ルサンチマン社員」が暴れ出さない仕組みづくりが必要だ

筆者 日本企業では、一定の学歴を身につけていても、思い描いたように就職できなかったり、職場で活躍できなかったりする人が多いように感じます。本人は「負けていない」と思っているのかもしれませんが、私にはやはり競争に負けた人に見えます。そうした人たちは、キャリア形成でうまくいっている人を羨ましく見ているのだろうな、とも思います。

磯村 ある年齢になると、「こんなはずではなかった」と悔やんでいるのかも
しれませんね。

 日本企業の傾向として、人材育成をしていく際の体系的なサポートが十分には機能していないことがあります。結局、キャリア形成が本人に任されているのです。だからこそ、差がつきやすいと言えます。

 ビジネススクールなどに通い、知識を獲得し、それを今後に生かそうとする、意識の高い会社員もいます。たとえば私が知る学生は、会社員として経理・財務の仕事をしていますが、ビジネススクールに通うことでそれらの知識を棚卸ししたいと話していました。

 しかし、そのような会社員が増えているというわけではありません。まだ、自らのキャリアについて真剣に考える人が少ないのかもしれませんね。