1970年代初頭のオイルショックの時に景気が過熱しインフレのリスクが懸念されると、日銀は金利を引き上げて資金の需要を抑制し、景気の持続性を高めようとしてきた。これが、“物価の安定と金融システムの安定を支えることで経済の発展に貢献する”という、主要中央銀行の目的の根幹にある考えだ。

 基本的に金融政策が機能するのは、モノに対する需要が堅調であり、それが物価の上昇につながる状況だといえる。このようにして金融政策が経済成長を支えられる場合、多くの国民は成長がもたらす幸福感を謳歌することができるだろう。

 一方、昨今の金融政策の役割は相当に拡大してきたといえる。世界経済の状況を俯瞰すると、各国の輸出は低迷している。これは需要が弱く、期待インフレ率も高まりづらいことを示している。

 日銀は利下げや量的緩和、そしてマイナス金利などの導入によって短期から長期、超長期の金利を低下させようとしている。それによって、需要のみならず、株式などリスク資産の価格をも刺激しようとしている。例えば、株価が上昇すると、わたしたちは先行きに対して楽観的になり、お金を使うことに前向きになることがある。これが“資産効果”だ。

 ただ、こうした積極的な金融緩和は永続的に続けられるものではない。例えば、金融機関が日銀に国債を売却しなくなると、量的緩和策は続けられない。マイナス金利に関しても、金利の急低下が金融機関の収益を圧迫し、長く続けられる政策とは言えない。需要が低迷する経済環境下、金融の緩和で景気を回復させることには限界がある。限界という異常な事態はどこかで修正される必要がある。

財政ファイナンスが進むと止めるのは困難
際限ない金融緩和は国民の幸福感を低下

 7月の金融政策決定会合で、日銀は“質・量・マイナス金利”の3次元での追加緩和を期待した市場を裏切り、上場投信(ETF)の買い入れ倍増を軸とする追加措置を決定した。また、日銀は9月の会合で経済や物価情勢、これまでの金融政策の効果を総括的に検証すると表明した。

 この“検証”が何を意味するか、よくわからない。市場参加者は「3次元での追加緩和の見送りは、日銀が限界を認めたことの表れだ。マイナス金利凍結など金融政策の修正が進むのでは」と考え始めている。

 修正の可能性がある一方、更なる金融緩和が進むかもしれない。7月の決定会合後、黒田総裁は金融政策の修正の可能性を表向きは否定している。それだけに、更に強力な、際限なき金融緩和が進む可能性は排除しきれない。その筆頭格がヘリコプターマネーだ。