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吉田恒のデータが語る為替の法則

「次の一手」は「協調介入」なのか?
G20為替合意に秘められた「暗号」とは?

吉田 恒
【第103回】 2010年10月27日
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 「通貨安戦争」が展開されているといった見方さえある中で、韓国・慶州で先週、G20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)が開かれました。

 ただ、ここでは具体的な合意がなされず、懸案材料を来月にソウルで開催予定のG20サミット(20カ国・地域首脳会合)に先送りしたとの見方が強いようです。

 成果が乏しく、この間の「米ドル安・円高・ユーロ高」の流れは大きく変わらないとの見方が多いようですが、細かく見ていくと、じつはちょっと気になる、「おやっ」と思うところもあります。

為替合意が「監視する」に変更された意味とは?

 「おやっ」と思うことの1つ目は、G20共同声明の中で為替に言及したのが初めてだということです。国際会議の共同声明の中で為替に言及するのは、これまではG7が基本でした。

 そして、これまでのG7の為替合意と今回のG20のものは一見するととても似ているのですが、表現が微妙に違っているところもあります。

 ここ数年のG7における為替への言及は「為替の過度の変動や無秩序な動き」は問題だから「よく注視する」との表現になっていました。

 これに対して、今回のG20では「過度の変動や無秩序な動き」といった部分までは同じですが、それを「注視する」のではなく「監視する」となっています。

これを英語で確認すると「monitor closely」から「vigilant」に変わったのです。これは偶然でしょうか? それとも、何らかの意図があって変更したのでしょうか?

 このように「注視する」と「監視する」を意図的に使い分けた例としては、かつてECB(欧州中央銀行)が行ったことがありました。

 ECBは、インフレ懸念に伴う利上げに動く際に、まずは「注視する」とけん制し、それがレベルアップして「監視する」となり、その後、実際の利上げを行ったのです。

 このECBの例を参考にすると、今回「監視する」といった表現を使ったことは意味があることで、意識的なものなのでしょう。

 これについて、「過度の変動や無秩序な動き」が今後も続くようならば、具体的な対抗策に動くといったことの示唆と考えられるのではないでしょうか?

 「具体的な行動」とは、たとえば協調介入ということかもしれません。

米ドルの値動きは、対先進国と対新興国で異なっている

 さて、G20が指摘している「過度な変動や無秩序な動き」とは、具体的にはどんなことなのでしょうか?

 それは、先進国通貨に対する「米ドル安」であり、具体的には「米ドル安・円高」、「米ドル安・ユーロ高」のことではないのでしょうか?

 G20開催前のガイトナー米財務長官の発言などから、米国が先進国通貨に対しての為替調整は十分に行われたが、新興国通貨に対しては不十分であると認識していることを再確認することができました。

 下の図をご覧ください。円やユーロなど先進国通貨に対する米ドルの総合力を示す実効相場を示したものですが、過去最安値圏まで下落していることがわかります。

 1995年に、米ドルは対円で80円割れへと下落しました。

 ところが、先進国通貨に対する米ドルの総合力を示す指数である「メジャーインデックス」を見ると、その1995年よりも現在は1割も下落しているのです。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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