インフレを世界に広める米国、
デフレを世界に広める中国
足許の世界経済は、景気低迷に苦しむ欧米などの先進国と、景気過熱気味の中国やブラジルなどの新興国の二極分化が、一段と鮮明化している。
そうした経済構造のなかで最も注目されるのは、インフレを世界に広めようとする米国と、デフレを海外に輸出している中国の動きだ。最近、通貨制度などを巡る両国の対立は先鋭化しており、今後の動向によっては、世界経済の波乱要因の1つになることが懸念される。
バブルの後始末で経済活動の低迷が続く米国は、金融政策を思い切り緩和して、大量のドル紙幣を市中に供給している。その結果、ドルが余剰となり、為替市場でドル安が進行している。
また、余ったドルの一部は商品市況や新興国に流れ込み、新興国の株式市場や物価水準を押し上げたりしている。言ってみれば、米国の経済政策は、世界的にインフレの動きを促進している。
一方中国は、依然過小評価されている人民元を背景に、安価な製品の輸出を続けている。安価な製品を輸入する側から見れば、中国からの製品の輸入は、消費者物価水準を押し下げてデフレ傾向を助長することにつながる。有体に言えば、中国がデフレを海外諸国に輸出している格好だ。
現在、米中両国が対照的な動きを示すなか、世界経済は微妙なバランスの上に成り立っている。
この微妙なバランスを保ちながら、世界経済が本格的な回復軌道に復帰できればよいのだが、予想外の事態の発生によって回復のプロセスが崩れるようだと、世界経済のリスク要因が一気に顕在化することも考えられる。