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辻広雅文 プリズム+one

裁量的財政政策の弊害を知る英国の財政健全化措置に日本は何を学ぶ

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]
【第115回】 2010年11月3日
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 今後4年間に渡って、各省庁の歳出予算を約20%カットする。49万人もの公務員を削減する。129の特殊法人を廃止する――ニュースを聞いて、一体なぜそんな荒療治ができるのかと驚いたのは、私だけだろうか。

 英国キャメロン保守党自民党連立政権が4年間でGDP比4~5%、810億ポンド(約10兆4490億円。1ポンド=129円換算)という戦後最大の歳出削減に乗り出す。一方で、増税を中心にGDP比1.6%、290億ポンド(約3兆7400億円)歳入も増加させる。

 この合計1100億ポンド(約14兆1900億円)に上る財政健全化措置によって、2015年に公的部門(一般政府+公的企業)の構造的経常収支(後述)を黒字化し、2010年度GDP比で10.1%まで拡大した財政赤字を1.1%まで縮小しようというのである。英国のGDPは約1兆4000億ポンド(約181兆円)だから、4年間で9%に当たる1260億ポンド(約16兆2540億円)もの財政収支の改善を行うということになる。

 簡単に、英国の予算構造を説明しておこう。

 英国の歳出予算(2010年度6968億ポンド=約90兆円)は、二種類の歳出予算からなっている。「省庁別歳出限度額」(DEL=Departmental Expenditure Limits。3943億ポンド=約51兆円)と「各年管理歳出」(AME=Annually Managed Expenditure。3024億ポンド=約39兆円)である。

 DELは、裁量的に制御可能である省庁別の歳出予算で、3年間(今回の改革では4年間)の合計支出額が決定される。未消化分は次年度に繰り越してもいい。原則として毎年度の査定はない。

 AMEは、社会保障費や利払い費など裁量的に制御が難しい歳出であり、経済社会の変化に合わせて毎年度査定が行われる。

 ややこしいことに、DEL、AMEともに「経常的支出」と「資本的支出」にさらに二分される。公共事業やIT整備費用などが資本的支出に当たり、それ以外の経費的支出が経常的支出である。省庁別の人件費や各種の補助金、社会保障費や利払い費などからなるDELとAMEの経常支出合計(2010年度は6373億ポンド=約82兆円。総支出の9割)を、2015年にはその年の税収で賄えるようにする――これが前述した「公的部門の構造的経常収支の黒字化」という大目標である。

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辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。


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