2016年5月末、社保審・生活保護基準部会が再開された。厚労省はまもなく、生活保護法を再度改正するための委員会も設置する予定のようだ。本人にとっての「生活保護での暮らし」とは、障害基礎年金・障害者加算のある障害者にとって、どのようなものだろうか?
生活保護の障害者を苦しめる
年金の「まとめ支給」
千葉県の県営住宅に住む馬場寿一さん(54歳)は、県営住宅で生活保護を利用して単身生活している精神障害者だ。かつては両親と2歳下の弟との4人暮らしだったが、聴覚障害者であった父親が病死し、ついで一家の生活を肉体労働で支えていた弟が難病に罹患した。弟の発病による失職以後、一家は生活保護を生計の糧とすることになった。肢体不自由の母親と馬場さんの2人は障害基礎年金の支給対象となっているが、2人分の年金では、医療費を含めて一家3人の生活を成り立たせることは不可能だった。
母親はその後、加齢に伴い、階段のある県営住宅で生活することが困難になったため、施設に入所した。数年後、母親は施設から戻る見込みがなくなり、2014年に世帯分離されることになった。数ヵ月後の2015年1月、弟は病気が進行して他界。馬場さんにとっては、世帯に入ってくる生活保護費が、3人世帯分→3人世帯分(1人は施設入所)→2人世帯分→1人世帯分 と減少し、したがって家計のやりくりが困難になることを意味した。弟を失った後の馬場さんの経済面での苦難は、本連載第36回で紹介したとおりだ。
その馬場さんに、その後の様子を聞かせていただいた。今、一番困っていることは?
「収入の、月ごとの『ガタガタ』です」
馬場さんの生活の糧は、100%が生活保護というわけではない。前述のとおり、精神障害により、障害基礎年金を受給している。2級の馬場さんの場合、年金は偶数月の15日に2ヵ月分がまとめて支給され、金額は約13万円だ。
「このガタガタが、とても響くんです。なんとかしたいです」(馬場さん)
児童扶養手当で問題となっている「まとめ支給」の問題だ。「まとめ支給」が深刻な貧困を引き起こしやすいことは、本連載第35回でも紹介した。物心ついて以後、生活歴のすべてが貧困と障害者差別の中にあった馬場さんも、同様に「まとめ支給」に苦しんでいる。