中国人による“爆買い”が一段落付く一方で、昨今、日本で検診や病気の治療を行う「医療ツーリズム」が活気づいている。しかし、制度の盲点を突き、日本の医療制度に“タダ乗り”している中国人も急増しているという。その実態を取材した(ダイヤモンド・オンライン副編集長 田島靖久)
「中国からの患者が押し寄せ、とにかく大変。言葉が通じず、しかも『はるばる来たのだから先に見ろ』などとわがままを言う人も多く、日本人の患者にしわ寄せが及んでいる。しかし、日本人へのしわ寄せはそれだけではない…」
こう語る医師が所属するがん専門の大手病院には、ここ数年、中国人のがん患者が大挙して訪れている。中国では承認されていないクスリの投与を望む患者や、最先端の治療を受けたいという患者が多いためだ。
中国でも、がんは死因の上位を占める国民病。中国の研究チームが米国がん協会発行の学術誌に発表した報告書によれば、2009~11年に収集された全人口の6.5%にあたるデータに基づいて推計した結果、中国全土における浸潤性がんの2015年の新規診断例は429万2000例に上るとみられている。
つまり、がんの新規診断は毎日1万2000例近くに上り、7500人が日々命を落としている計算だ。それだけの病気となった中国のがん患者たちにとって、日本の医療レベルは高く信頼性も高いため、検診や治療を望む人たちが殺到しているというわけだ。
ところが、である。こうした中国人たちの中に、“招かれざる客”が多数紛れているというのだ。
先の医師は匿名を条件に語る。
「がんの治療費、なかでも最先端治療の費用は高く、中国人でも超富裕層しか受けられないはず。しかし、ここ数年、そうでもない一般の患者が急増している」