「技術立国」日本が情報技術で絶望的に弱い現実

 経済政策の手詰まり感が強まっている。

 円安を通じた企業利益増によって、株価は一時的に引き上げられた。しかし、金融緩和は、消費や投資などの実体経済を動かすには至っていない。

 金融緩和は、本格的な成長戦略をつくるまでの時間稼ぎとして位置づけられていた。ところがいつの間にか、金融緩和がすべてということになってしまった。金融政策で経済を好転できるという考えが幻想であることが、ようやく認識されるようになったのだ。

 実体経済を改善する上で最も重要な課題は、技術革新を進め、その成果を現実の経済活動に取り入れることだ。

 最初に問題となるのは、技術開発の方向づけだ。

 日本は技術立国と言われてきた。しかし、日本が得意なのは、古いタイプの技術である。新しいタイプの技術に関しては、日本の対応の遅れが目立つ。材料や装置関連など古いタイプの技術ではいまだに強いが、情報やフィンテック関連といった新しい分野になると、国際比較での日本の順位はかなり下になる。

 この背後には、さまざまな規制や企業の構造、そして高等教育の問題がある。日本が新しい成長を実現するには、これらに関する基本的な見直しが必要だ。

新技術の動向はハードからソフトへ
ブロックチェーンやAIはソフトウエア

 まず、技術進歩の方向がどのようなものであるかを見ておこう。

 世界経済フォーラム(WEF)は、2016年8月、向こう数年間に世界に大きな影響を及ぼす可能性が高い10大新興技術を発表した(Top 10 Emerging Technologies of 2016)。

 そこで取り上げられたのは、バイオ・医療関係が2つ(光遺伝学、生体機能チップ)、材料関係が4つ(次世代電池、2D材料、ペロブスカイト太陽電池、システム代謝工学)。残り4つは、つぎのように、情報関連の技術だ。

 ・ナノセンサーとインターネット・オブ・ナノシングス(人体内で循環できたり建築資材に埋め込めたりするナノセンサー)
 ・ブロックチェーン(仮想通貨の基礎技術である分散公開台帳)
 ・自動車の自動運転
 ・オープンAIエコシステム(自然言語処理と社会意識アルゴリズムが進歩し、またビッグデータの利用が可能になった。スマートデジタルアシスタントは、近い将来、幅広い仕事で役立つようになる)