日本の各都道府県には
世界各国の経済が詰まっている
各国の経済規模はGDP(国内総生産)であらわされる。そして、日本の近世に、石高制の下で、米の収穫量に換算した経済規模指標である石高で各藩が格付けされていたように、現代では、世界各国はGDPで格付けされている。WHO(世界保健機関)FAO(国連食糧農業機関)、世界銀行といった国際機関への拠出金も基本的にはGDP規模に対応している。
石高制の基礎となったのが検地という調査統計だったとしたら、GDPによる国際秩序はGDP統計を基礎としている。統計には統治手段としての側面と観察手段としての両面があるが、GDP統計にも統治手段としての側面があるわけである。
もっとも、近世の石高制でも、隠田(検地逃れの田畑)、縄伸び(田畑を広げて行って実際の面積が大きくなること)などで表高と内高が一致していなかったように、IMFの研究によれば、GDPでも把捉されない「シャドウエコノミー」がOECD諸国でも10~30%存在しているとも言われている。しかし、国連の基準に基づいて作成され、各国の相互比較を可能とするデータとしてはGDP統計を措いて他にはない。
前置きが長くなったが、今回は、各国のGDP統計と日本の各地域のGDPに当たる県内総生産や市町村内総生産のデータとを使って、日本の各地域の経済規模が世界のどんな国の経済規模と匹敵しているかを調べ、グラフにあらわしてみよう。
英「エコノミスト」誌の記事に付されるグラフやマップはアイデアのよさと簡潔で分かりやすい表現で際立っている。米国の各州の経済規模が海外のどの国に匹敵するかをマップ化したのを手始めに中国の各省や日本の地域ブロックの経済規模を同じように世界のどの国に匹敵するかを描いたマップを掲載し、これが同誌のいわば“おはこ”となっている。
ただし、日本については残念なことに東北や九州といった地域ブロック単位での対比であり、日本人にとってはもっとなじみ深い都道府県単位のマップは描かれていない。そこで、私は、おそらく本邦初だったと思うが、自分の著書やサイトでこれを掲載し、日本経済もそう捨てたものではないということの証左とした。
次ページの図1がその最新版のマップである。これまでは経済規模をGDP額の棒グラフであらわすとともに地図上で対応国名を表記するという2図セットの表現だったのを、今回は、これを一つの図に統合するため地図内に円の大きさでGDP規模をあらわすという新たな方式を試みた。