(店長)「急で悪いんだけど、来週の月曜、シフト入ってくれないかな?」
(スタッフ)「えっ…またですか?早く新しい人を採用してくださいよ~」
(店長)「求人は出してるけど、ニュースでも言われているとおり、日本は人手不足なんだよ!」
(スタッフ)「でも店長、ウチに人気がないだけなんじゃないですか?」

いま、アルバイトの人材不足が深刻だと言われている。日本の人材市場では何が起きているのか?人手不足に陥っている原因は何なのか?今後、人材市場はどうなっていくのか?アルバイト不足の実態をデータで明らかにしていこう。最新刊『アルバイト・パート[採用・育成]入門』から一部を紹介する。

深刻化するアルバイト不足

「アルバイトが足りない」は“本当”なのか?中原淳(なかはら・じゅん)
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授/東京大学大学院 学際情報学府(兼任)/大阪大学博士(人間科学)
1975年北海道旭川生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、米国マサチューセッツ工科大学客員研究員などを経て、2006年より現職。
「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、リーダーシップ開発について研究している。専門は経営学習論・人的資源開発論。
著書・編著に『アルバイト・パート[採用・育成]入門』『企業内人材育成入門』『研修開発入門』(以上ダイヤモンド社)など多数。

パーソルグループ
日本最大級の総合人材サービスグループ。本書においては、同社のシンクタンク・コンサルティング機能を担う株式会社パーソル総合研究所が、中原淳氏とともに大企業7社8ブランド・約2万5000人に対する大規模調査と各種分析・示唆の抽出を実施している。

このところ「アルバイト不足が慢性的に続いている」「求人を出してもまったく応募が来ない」といった悲痛な声がいたるところで聞かれるようになってきました。
みなさんも「最近、どうもアルバイトの採用が難しくなってきた」という感覚をお持ちなのではないでしょうか?実際、日本はいま、かつてないほどの「人手不足」に直面しています。

人手不足は、企業の大小や雇用の正規・非正規を問わず、あらゆる業種・職種で起きていますが、顕著なのが「アルバイト人材の不足」です。なかでも飲食店、飲食料品小売、娯楽サービス業などは深刻な状況に陥っています。
たとえば首都圏では、コンビニエンスストアと外食チェーンとのあいだで、人材の奪い合いがはじまっています。その結果、出店戦略の見直しを迫られるケースや、営業時間を短縮せざるを得ないケースも出てきており、深刻さが増しています。

対策はさまざまありそうだが…

これを打開するアクションとしては、どんなことが考えられるでしょうか?

いちばん手っ取り早いのは、採用のための予算を上げることでしょう。求人広告により多くのお金をかければ、応募者数の増加が見込めます。

また、時給を上げれば、より多くの人が集まるようにはなるでしょう。しかし、これらの対策は企業のコスト増につながりますし、そもそも店長に裁量がないケースもありますから、限界があります。

それ以外には、募集する人材の幅を広げるという道もあるでしょう。近年では、首都圏や都市部を中心に外国人のアルバイト雇用はかなり増えてきています。また、従来はあまり雇用されてこなかったシニア人材を積極活用する企業も見られるようになりました。

さらには、雇用条件を工夫する職場も出てきています。家庭の事情で短い時間しか働けない主婦の都合を考えて、数時間だけのシフトにも対応するといった方策です。