シリコンバレーのバイオ企業が
長寿ビジネスに本腰

ITで人間はさらに長寿になれるのか世界最大のヒトゲノムデータベースを持つバイオ企業を創業した、クレッグ・ヴェンター氏(右) Photo by Noriko Takiguchi

 さる12月7日、サンフランシスコで「エコノミスト」誌が主催する「The Business of Longevity(長寿ビジネス)」会議が開催された。

 シリコンバレーでは、寿命を延ばすために多量のサプリメントを飲んだり、未来に生き返るために死後、脳を凍結したりする人々が一部にいるが、そうした極端な例を除いても、寿命を延ばすことに関する研究やビジネスはますます注目を集めている。アルファベット(旧グーグル)の傘下会社であるカリコの存在も大きいようだ。同社は、健康や長寿を目的としたバイオテクノロジーの会社だ。

 さて、この会議で最も近未来的な医療や健康管理の実態を語ったのは、クレッグ・ヴェンター氏だろう。ヒトゲノム計画への貢献で知られる同氏は、2014年にサンディエゴを拠点とするバイオ・スタートアップのヒューマン・ロンジヴィティー(HLI)を創設した。

 HLIは、いずれ毎年10万のゲノムを読み取って、世界最大のヒトゲノムデータベースを作ることを目的としている。また、ヒトの微生物の解読も含めて、人間の健康に関わるデータを収集する。ここから、病気の治療薬や診断ツールを開発するのが最終的な目標だ。データベースは、外部の研究者らが有料で利用できるビジネスとしても活用する計画だ。

全く異常がなくても
がんの手術をする時代に?

 登壇したヴェンター氏は、実は5週間前に前立腺がんと診断され、3週間前に摘出手術を受けたと語った。しかも、この診断は、通常前立腺がんの判断材料とされるPSA(前立腺特異抗原)基準値ではまったく異常がない状態で下されたものだという。

 それも、HLIが行っているパーソナル医療検査サービス「ヘルス・ヌクレウス」のおかげだ。

 ヘルス・ヌクレウスでは、個人のゲノムや病原菌の解読、全身の医療画像化を含む高度な診断技術を用いて、場合によっては健康にも見える人の病気を見つけることをサービスとしている。ヴェンター氏の場合も、DNAのパターンの中で異常が見られたことで、がんがわかった。