それはフェイスブックから始まった!

 上場企業の食品会社Cに勤めるAは、最近話題のフェイスブックのヘビーユーザーである。フェイスブックは他のSNSと違い、本名を登録することが前提となっているが、これまでAは趣味の骨董を話題として、色々な人々と交流を深めてきた。

 その中には学生、会社員、主婦、弁護士からタクシー運転手まで多くの仲間がいて、お互いの知識や骨董品についてSNSを通じて紹介しあっていた。知らないうちに仲間が増え、その数は300人を超えていた。

 今年に入り、Aの勤める食品会社Cは、継続する経済的不況と海外企業の進出のあおりを受けて、急激に業績を悪化させていた。早期退職などを会社が検討し始めており、Aにも肩たたきがはじまった。まさか30代の自分にリストラの話がくるとは寝耳に水だった。

 これまでまじめに仕事に打ち込んできたつもりが、この仕打ちはどうしたことか? 自分よりも先にたたかれるべき問題児はいくらでもいるはずだ。そう思うとこらえきれない怒りにも似た気持ちが、ふつふつと湧いてきた。

 勢いにまかせて社内の残業問題や職場環境の危機的状況をフェイスブックに書き込んだ。それを閲覧した同僚で友人でもあるXが、今度はその内容についてツイッターでつぶやいたところ、意外にも話題となり、あちこちでつぶやかれることになった。これが予想もつかないネットにおける風評連鎖の始まりとなってしまう。

過剰な社内対応がさらに大きな火種に!

 食品会社Cでは人事部スタッフが、採用予定者や従業員の登録したフェイスブックやツイッター等を常日頃から照会し、当人の未熟な面などを分析して採用を見合わせたり、不正行動がないかどうかについて素行の監視を行っている。