若者の生涯収入“倍増”が人口減少でも夢ではない理由未曽有の人口減少時代に突入しつつある日本では、近い将来、経済が衰退するのではないかという説が、半ば常識として語られている。しかし、それは本当だろうか?

未曽有の人口減少時代に突入しつつある日本では、労働力人口や消費の減少により、近い将来、経済が衰退するのではないかという不安が募っている。しかし、それは本当だろうか。もしも、人口減少にもかかわらず経済が成長し、日本人が豊かになれる未来があるとしたら――。実は、そんなシナリオを唱える専門家は現実にいる。マクロ経済学に精通する吉川洋・立正大学経済学部教授が唱える、これまでとは違う「人口と日本経済」論に耳を傾けよう。(まとめ/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

財政危機に地方の消滅、
人口減少の脅威は確かだが……。

 日本は今、かつてない人口減少時代を迎えようとしています。2012年1月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(出生中位)によると、2015年現在、1億2711万人(15年国勢調査)いる日本の人口は、2110年には4286万人になると見られています。今後100年間で、日本の人口は約3分の1まで減少するというのです。少子化に伴う人口減少・急速な高齢化により、日本社会に深刻な影響が起きるでしょう。

 少子高齢化の進行による最も大きな影響の1つは、社会保障の増大と財政赤字の拡大です。年金、医療、介護などの社会保障費は現役世代(15~64歳)が高齢世代(65歳以上)を支えることで成り立っています。

 足もとで、日本の高齢化率(総人口のうち65歳以上が占める割合)は26.7%(2015年国勢調査)となっており、日本人の4人に1人以上は高齢者です。現役世代と高齢世代の比率は2.5対1(2013年時点)で、現役世代2~3人で1人の高齢者を支える「騎馬戦」の状態になっています。これが、高齢化率のピークを迎えると見られる2060年には1.3対1となり、ほぼ1人の現役が1人の高齢者を支える「肩車」の状態になります。