東芝・日本郵政の巨額損失を招いた「のれん代減損」とは何か東芝が監査法人から「意見不表明」の状態で2017年3月期の巨額赤字見通しを発表するという、前代未聞の事態が起きた。東芝や日本郵政を窮地に追い込んだ「のれん代の減損」とは何か Photo by Ryosuke Shimizu

 5月15日、東芝が監査法人から「意見不表明」の状態で2017年3月期の最終赤字が9500億円になるという見通しを発表した。ちなみに監査法人が「意見不表明」というのは監査の世界では異常事態で、その意味するところは「監査法人は“赤字が9500億円で済む”と東芝が主張する裏付けを確認するための十分な資料と協力を経営陣から得られなかった」ということを意味している。

 さて、今回の記事の本題は東芝の迷走の話ではなく、大きな損失の原因である「のれん代の減損」とは何かについて取り上げたい。というのは、後述するように時価総額上位の優良企業の多くが、減損リスクと無関係ではないからだ。

 実際、4月には日本郵政が3200億円の黒字決算の見込みから一転して、マイナス400億円の赤字決算に見通しを変更した。オーストラリアで買収した物流子会社に、4000億円規模の減損が発生したのだ。

 また今年1月には、ソニーが映画事業に関して1121億円の減損を発表している。これは現在のソニーピクチャーズに相当する旧コロンビア映画の営業権(筆者注:のれん代の古い呼び名だが、ソニーの発表通りに記述しておく)の減損を織り込んだものだ。