昨年3月に長年勤務していた東大病院という組織を離れ、現在はどこにも所属することなく、「ひとり」という状態を満喫している矢作直樹医師が、新刊『今を楽しむ』で率直に語った、「ひとりは寂しい」という世間の思い込みに振り回されることなく、ひとりであるという自由な時間を有意義に過ごす秘訣を紹介します。
関わりたくない人と縁切りする方法
撮影:松島和彦
すべてのものは、自分が認識しなくなった瞬間に死んでしまいます。
死ぬというか、存在が消えるのです。
身の回りのものでも何でも、そうです。
つまり、「自己の認識から外れた存在は、存在しない」のです。
たとえば、ペン。
私もたまに、バッグに入れっぱなしにして忘れてしまうことがあります。それも長期間です。この場合、そのペンは存在しません。
私の認識の中に「ない」からです。「あれ、どこにやったかな?」と探しものをするのは認識内に戻った証拠ですが、なくなっているのにいつまでも探さないのは、すでに「認識に存在していない」からです。
ちょっと量子論的な話になりましたが、これ、実は人間にも当てはまります。
普段、自分が意識しない人は、すでに自分の中で「存在しない」人です。実際に、その人のことを意識していないし、考えることがないわけですから、その人は自分の中で「死んでいる」というわけです。もはや存在していません。
これは関わりたくない人との縁切りにも応用できます。その人物を自分の「認識の外」に押し出すことで、その人物とのご縁は消えます。
逆に意識する人は、自分の認識の内側にいる人であり、自分の中で「生きている」人です。しかし、これも時間の経過で変化します。以前は意識していたけれど、現在はまったく意識していないのであれば、その相手は自分の中では存在しません。
時間の経過に関係なく、いつも意識するような相手は、はるか遠い過去からの「お付き合い」があったのかもしれません。
自分の中で「生きている」人は、ご縁がある証拠です。