文部科学省は、平成24年度予算に学校給食の放射能検査費用を計上することを決めた。検査を希望する自治体に費用の一部を補助する。予算枠は概算要求ベースで3億円ほどになる見込みという。

 すでにいくつかの自治体では、自主的に給食検査が行われている。国と自治体の生産地での原材料検査だけでは、食材の安全性が担保できないことが明らかとなり、消費者の不安が高まっていたためだ。

 今回、予算補助の対象となる給食検査は、冷凍保存した1週間分の給食をミキサーですりつぶして測定する「事後検査」だ。使用する食材を事前に全て検査するのは、費用的に考えて現実的ではないからだ。

 国が定めた、産地で行われる原材料の放射能検査では、食材ごとに細かく切り刻み、ゲルマニウム半導体検出器という1台1500万円もする専門の検査器で、1検体あたり30分かけて測定する必要がある。自前で検査機器を持たない場合は、外部の検査機関に委託することになるが、その場合1検体あたり2万円以上の費用がかかる。たとえば1日の給食で10種類の食材があった場合、20万円もかかることになる計算だ。

 自治体の苦しい台所事情を考えれば、そこまでの検査はできない。事後のミキサー検査なら、検査する検体は1種類ですみコストも格段に安くなる。横須賀市、海老名市、綾瀬市、千葉市、桶川市、我孫子市、蕨市、杉並区、世田谷区、取手市、南相馬市などがこの方法で給食検査を始めている。さらに、2月2日、福島県が平成24年度予算に、県内の全市町村を対象に、学校給食の検査事業を計上することを決めた。

 給食を食べたあとに放射性物質の摂取量を知っても意味がないではないか、と思われるかもしれない。しかし、大きく2つのメリットがある。

 まず、すでに生産地で行われている原材料段階での放射能検査を補完する役割が期待できることだ。

 横須賀市では給食検査の結果を毎週ホームページで公開するようにしたところ、「保護者からの学校給食に対する不安の声が、十数件まで減った」(藤井孝生・横須賀市教育委員会学校保健課課長)。