膨大な量のデータをスピーディに分析し社会や経営に生かす「ビッグデータ」ビジネス。最前線を走る企業にその意義と活用を聞いた。

野村総合研究所社長 嶋本 正<br />ビッグデータが社会を変え<br />日本企業を飛躍させるPhoto by Toshiaki Usami

──昨今、話題の「ビッグデータ」を、どう考えるべきか。

 従来、多くのデータの中から、価値のある情報を抽出して活用することは行われてきた。それが技術とインフラの発展で、より膨大な規模が対象となり、活用が質的に高まるということだ。

 スマートフォンやセンサーなどが普及し、情報が刻々と収集される。クラウドと呼ばれる、通信網でつながった複数のコンピュータで、そうした情報が瞬時に分析される。その結果、変化の背景が深く読めたり、精度の高い予測ができるようになったりする。

──昨年の大震災時に、すでに力を発揮した。

 ビッグデータを活用した当社のサービス「全力案内!」は、渋滞情報をリアルタイムで提供できた。自動車で走行中のドライバーの携帯電話から走行データを集め、分析・加工してサーバで地図データとして保持。サービスの会員はその情報を携帯端末で見に行くことで、渋滞を避けられた。

──今後、仕事のやり方も劇的に変わっていくのか。

 その可能性は大きい。重要なのは、膨大な情報の分析をどう読み取り、判断するか。当社はIT専門家とコンサルタントが長年協働してきたが、そうして培った力とノウハウで、他社にはない価値を提供できると考えている。

──企業の枠を超えた、共創の実証実験を今春から始めた。

 コンサルタントだけでなく、研究者や技術者も顧客と直接情報交換し、その課題を聞き、議論を重ね、解決策を探っていく。第三者の専門家も巻き込んでいく。先行事例の一つとして、ビッグデータの活用方法を開発する。