主要先進国によるG7の存在感が薄くなる一方、かといって新興国を含むG20は機能していない。米中によるG2体制も囁かれるがリーダーシップ面では問題があり、結果、現在は主導国なき世界「Gゼロ」の時代となっている――そんな国際社会の現状を説く気鋭の政治学者が、「ポストGゼロ時代」の世界と日本が取るべき針路を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)
地政学的リスク分析を専門とするアメリカのコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長で、ワールド・ポリシー研究所の上級研究員。スタンフォード大学で博士号取得後、世界的なシンクタンクであるフーバー研究所の研究員に最年少25歳で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。グローバルな政治リスク分析には定評があり、ロシアのキリエンコ元首相やアメリカの民主・共和両党の大統領候補者らに助言を行ってきた。1969年生まれ。Photo by Marc Bryan-Brown
――『「Gゼロ」後の世界』(日本経済新聞出版社)という本を出しましたが、かつて有力だったG7がG20へとシフトしたものの、今は主導国がないという意味でGゼロということですね。アメリカと中国はどうなったのでしょうか。
アメリカと中国がパワフルではなくなったと言っているのではありません。今の世界でその2ヵ国が、経済的に最大の強国であることは明らかです。しかし、「G2」という言葉を使うと、そこにはリーダーシップがあるという意味が含まれます。つまり、その2ヵ国が選択する方向に世界を導こうとするというニュアンスになります。協調してやるのか、対立しながらやるのか、いずれにせよ世界をリードするという意味が含まれます。
しかし、今の状態は、リーダーシップ不在です。シリアを見ても、ヨーロッパを見てもそれは明らかです。つまり、「Gゼロ」の状態なのです。
「Gゼロ」状態を招いた
5つの原因
――Gゼロの状態になった原因は何でしょうか。
5つあると思います。その5つはほぼ同じ時期に生じました。ひとつは影響力がある国が多すぎることです。多すぎると、対話することも難しい、調和することも難しい、国によって選挙の時期も異なるので、何かを成し遂げないことの言い訳が常にできてしまう。それがひとつ目の原因です。