ソフトバンクは10月1日、イー・アクセスを約1800億円で買収すると発表した。業界3位と4位が統合することで、業界2位のKDDIに並ぶことになる。

総務省の電波政策をコケにした<br />ソフトバンクの電撃買収劇犬猿の仲とされたソフトバンクの孫正義社長(左)とイー・アクセスの千本倖生会長が買収発表で握手した
Photo:JIJI

 業界関係者によれば、イー・アクセスの身売り話は年明けごろから浮上していたという。だが、大手通信事業者らとの交渉は価格などをめぐり難航していた。

 そこにソフトバンクが時価総額の約3倍に当たる破格の値段を提示したことで、イー・アクセス側も納得。本格交渉から約1週間の電撃発表に至った。

 ソフトバンクがそこまで欲しがるのは、イー・アクセスの使用している周波数帯がiPhone5の使用できる帯域と合致していたからだ。高速通信サービス「LTE」のネットワーク整備でKDDIに対し劣勢に立たされており、イー・アクセスの持つ帯域と基地局が是が非でも必要だったのだ。

 それだけではない。実はソフトバンクはタダ同然で手に入れたものがある。効率よく遠くに電波を飛ばせる700メガヘルツ帯の周波数だ。俗に「プラチナバンド」と呼ばれ、土地でいえば「銀座の一等地」に当たる。

 総務省は、地上デジタル放送への切り替えなどに伴い使わなくなった電波を携帯電話向けに割り当てようと電波の再編を行っている。

 中でもプラチナバンドは、その名の通り希少価値を持ち、世界的にはオークションで数千億円の値がつく代物だ。総務省はオークション導入を進めているが、今回のプラチナバンドは比較審査で選んでいた。

 結果、ソフトバンクは今年3月に900メガヘルツ帯を獲得。そのため、700メガヘルツ帯は6月に、NTTドコモとKDDI、イー・アクセスが分け合った。

 そこでソフトバンクは奇策に出た。イー・アクセスを丸ごと買収することで二つの帯域を手中に収めたのだ。孫正義社長は「国民の財産がより多くの人に活用されるのはいいことだ」と言ってのけた。