欧州債務問題が長期化しているなか、10月18~19日に、EU首脳会議が開かれる。
去る6月17日のギリシャ再選挙において緊縮派が勝利したことで、選挙結果次第でギリシャはユーロ離脱か、と身構えていた市場の緊迫感はひとまず和らいだ。しかしながら、その後も、ユーロ圏、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のいわゆる「トロイカ」は、本年3月に決定した第二次支援融資の実行を未だに渋り続けている。トロイカの調査団は7月以降、夏休み期間をはさんで、何度もアテネを訪問しているものの、事態に目立った進展はみられない。かといって、市場に大混乱が発生しているわけでもない。
1988年京都大学法学部卒。日本銀行勤務を経て、現職。専門は金融、財政、公共政策。これまでの執筆論文・レポート等は日本総研の研究員紹介ページ参照。公職は財務省国税審議会委員、厚生労働省社会保障審議会委員、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会委員ほか。
本稿では、欧州債務問題がこのように、「静かに」「長期化」することが可能となっている背景を明らかにする。そこには、いかなる『からくり』があるのか。それに伴い、水面下で各国にいかなる負担が及んでいるのか。このところは「表向き」は静かな欧州情勢だが、その裏側の深刻さはどの程度なのか。そして、今後あり得る展開を考えたい。
欧州中央銀行制度による
『隠れた救済メカニズム』
ユーロ圏の中央銀行は、金融政策等の運営にかかる意思決定機関としてのECBと、加盟各国の中央銀行の集合体として構成されており、欧州中央銀行制度(ユーロ・システム)と呼称される。そのなかで、各国中銀をつなぐ即時グロス決済システムがTARGET2(Trans-European Automated Real- Time Gross Settlement Express Transferの略称)である。