トルコリラの下落が止まらない。ドル安基調が続く中でその弱さは際立つ。周辺地域での地政学リスクの高まりが重しになっている。米大統領選挙でバイデン氏が勝利すれば対米関係が一層悪化する懸念もあり、先行きの悪材料となっている。年初からの下落に対する介入で外貨準備高も激減しており、デフォルトの可能性も高まっている。(第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)
FRBの量的緩和拡大の中
最安値更新のトルコリラ
10月に入って以降の国際金融市場において、トルコの通貨リラ相場が最安値を更新する展開が続いている。2018年のリラ安をきっかけにした国際金融市場の動揺(トルコ・ショック)の再燃につながるか否かに注目が集まっている。
年明け以降の新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の減速懸念の高まりを受けた全世界的な金融緩和を背景に、その後の国際金融市場は「カネ余り」の状況が続いている。
なかでも、FRB(米連邦準備制度理事会)による量的緩和政策などを追い風に、足元の米ドルには下押し圧力が掛かっている。こうした状況にもかかわらず、トルコリラは一時最安値を更新するなど、他の新興国通貨と比較しても対照的な動きが続いている。