総括が必要な異次元緩和10年
経済は活性化したのか
2013年4月から黒田東彦総裁の下で日本銀行が異次元金融緩和政策(「量的・質的金融緩和」)を始めて以来、ほぼ10年が経過した。
来年4月に総裁の交代が予定されている今、この政策が何をもたらしたかを総括することが必要だ。
異次元金融緩和政策は、物価を引き上げることによって経済の活性化を図るとした。その活性化の過程で賃金も上がると説明された。
黒田総裁は、14年3月20日の日本商工会議所での講演「なぜ『2%』」の物価上昇を目指すのか」で、次の趣旨のことを述べている。
(1)賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらない。
さらには、(2)企業の売り上げが伸びて、収益が増加すれば、それに見合って、労働者に支払われる賃金は増加する (3)そうでなければ、労働分配率が下がり続けることになってしまうが、こうしたことは、一時的にはともかく、長く続くとは考えられないーとも述べた。
異次元緩和の根底にある日銀の物価と賃金の関係、経済活性化の考え方や道筋などを示したものだが、この通りのことが実現しただろうか?