国際情勢を見るのに、地政学の視点は欠かせない。地理・世界史・民族。これら3枚のレンズを通すと、各国固有の事情が浮かび上がってくるのだ。本連載『ウクライナ危機の本質がわかる「地政学」超入門』では、最近再び脚光を浴びている地政学の基本や、地政学の観点から見えてくる各国ならではの事情をお届けする。今回は、地政学的視点から見た「ドイツ没落の危機」を解説しよう。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
EUの「盟主」ドイツ
政治でも経済でも独り勝ち?
フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は著書『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)で、「『ドイツ帝国』は最初のうちもっぱら経済的だったが、今日ではすでに政治的なものになっている」と指摘している。
ここで、ドイツの過去と現在をデータで確認しておこう(下図参照)。
EU(欧州連合)の盟主であるドイツ。欧州において経済の国境をなくし、通貨を統合すれば、東西にわたる欧州の中心という地理的条件に恵まれ、輸出競争力のある強い産業を持つドイツが独り勝ちを収めるのは自明ともいえた。さらに、ユーロ危機を通じてEUにおける経済財政政策を巡り、ドイツの政治的支配力も強まった。
次ページでは、地図を見ながら「ドイツ帝国」没落の危機を考えていく。