11月は世界の転換点になるかもしれない。6日に米国の大統領選挙があり、8日からは中国共産党全国代表大会が開かれ指導者が替わる。米国はオバマかロムニーか、どちらが大統領になっても深刻な赤字財政を抱えながら「米国の威信回復」を求められる。
貧富の差をアメリカンドリームというキャッチフレーズに塗り替えて、成長路線をひた走ってきた米国は、金融資本主義が行き詰まり、膨脹路線の手じまいが迫られている。深刻さは中国も同じだ。「豊かになれる人からどんどん」の先富政策が耐え難い格差を生み、共産党支配にひび割れが生じている。
11月から始まる米中新体制の助走期間は要注意だ。
米国と中国に共通する
「トリクルダウン社会」
アメリカと中国に共通するのは「トリクルダウン社会」であること。トリクルダウンとはしたたり落ちる、という意味で、社会の上層部である経済強者(優良企業や高額所得者)が儲かれば、富は巡りめぐって貧しい人たちにも滴(したた)り落ちる、という手法だ。分かりやすい例が「富裕層への減税」。消費性向の高い金持ちが潤えば消費が刺激され、生産が拡大し、雇用が増えるという連鎖を期待する。大企業への規制緩和も同様だ。増えた利益が新たな設備投資や就業機会を生み経済は拡大する。
効率の悪い零細企業や個人を応援しても経済効果は小さい。運と能力に恵まれた先頭集団を元気にすることが、社会全体に恩恵をもたらす、という経済思想である。新大陸という自由競争社会に生まれたアメリカンドリームは、強者が牽引するトリクルダウン社会を生み、今も「ドリームの呪縛」から逃れられない。
鄧小平が唱えた先富政策も成功者が全体を引っ張る、というトリクルダウンの発想だ。毛沢東革命がもたらした「等しく貧しい社会」に見切りをつけ、儲ける自由で成長を牽引する政策に転換した。改革開放は30年で中国を世界第2位の経済大国に成長させた。