「週5でカラオケ」のために要介護度を偽装も?呆れた実態に介護現場が怒りの声写真はイメージです Photo:PIXTA

2000年に始まった介護保険制度は、増える高齢者に必要な介護サービスを提供すべく設計された。だがあれから四半世紀、支援が必要な人ほどサービスを制限され、一方で制度の抜け穴を利用する不正は後を絶たない。介護現場の矛盾と問題点に迫る。※本稿は、甚野博則『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。

安倍晋三の発言を契機に
変わった「自立支援」の理念

 介護保険制度は、「介護の社会化」という大きな期待を背負って、2000年に導入された。その介護保険制度は今、我々に何をもたらしたのか。

 制度が始まった当初は、超高齢社会に備えるため、高齢者が必要な介護サービスを受けられるようにすることを目的としていたはずだった。

 しかし、実際には「サービスの利用を抑制する仕組み」が組み込まれており、その結果、多くの矛盾と限界が浮き彫りになっていると言わざるを得ない。

 その1つが介護保険制度でたびたび目にする「自立支援」という言葉だ。「自立」とは、必要なサービスを利用しながら、その人らしく生活を続けることを意味している。その自立のため、制度を利用して支援していくというすばらしい理念だ。

 ところが、ある時期を境に、その理念が変化し始めた。

 それは2016年11月に開かれた「未来投資会議」でのことだ。

 安倍晋三総理(当時)が「これからの介護は高齢者が自分でできるようになることを助ける自立支援に軸足を置く」と発言したことが1つの契機だろう。