郵政上場で火花散る住宅ローン<br />焦る銀行と割を食う金融庁日本郵政傘下のゆうちょ銀が認可申請する住宅ローンなどの新規事業は、早ければ年内に適否が判断される
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 日本郵政が2015年10月をメドに、株式を上場する計画を打ち出した。

 政府の郵政民営化委員会から、住宅ローンなど新規事業への参入には「具体的な上場計画が必要」と指摘されていただけに、早期実現に向けて、まずは第一段階をクリアしたことになる。

 「(完全)民営化が終わるまでは、何もやってはいけないというタガをはずす法律ができた、と解釈せざるを得ない」

 10月29日、民営化委の開催後、西室泰三委員長が発した言葉に、多くの銀行関係者は危機感を強めている。ゆうちょ銀行が、住宅ローンに参入することに、「民営化委が前向きに検討していると受け止めた」(地方銀行幹部)からだ。

 10月1日に施行された改正郵政民営化法では、日本郵政傘下のゆうちょ銀とかんぽ生命保険の金融2社の全株式売却(完全民営化)について、期限を定めていた「小泉路線」を修正し、「処分を目指す」という努力規定にしている。

 改正を受け銀行業界は、ゆうちょ銀の完全民営化の期限が決まらない段階で、新規業務は「検討することすら認められない」と強く主張してきた。ただ、その声は徐々にかき消されつつある。

 預金残高176兆円、自己資本比率71.63%。ゆうちょ銀は、メガバンクすらかすんで見えるほどの規模を誇る巨大金融機関だ。

 9月には金融庁など当局に、住宅ローン参入の認可を申請。これまでスルガ銀行との提携で培ったノウハウを活用して、最大233店舗で5年後に7900億円の残高を獲得する目標を示した。