
2025年に値上げする食品はなんと1万4409品目に上るという。一方、私たち生活者としては食品以外の、2つの値上がりも見逃せない。政策に翻弄されがちな電気代と薬代(26年見込み)だ。値上げラッシュに個人ができる対策は何か。「知っている人だけ得する制度」も紹介しよう。(未来調達研究所 坂口孝則)
中野サンプラザ再開発に見る物価上昇

私は中野という街が大好きだった。独身のころ、サブカルチャーの聖地「中野ブロードウェイ」を愛するがゆえ中野駅周辺に住んでいた。
そして毎日のようにライブ会場で有名な複合ビル「中野サンプラザ」の前を通っていた。その中野サンプラザが最近、再開発をめぐって全国ニュースにたびたび取り上げられている。
中野サンプラザは全面建て替えを予定し、総事業費1810億円を計画していた。ところが近年の世界的な建設資材の高騰や人件費上昇などを受けて、総事業費は倍近い約3540億円に膨れ上がった。これにより区は再開発を断念し、計画は白紙になっている。
こうしたコスト急上昇のせいで建設計画が予定どおりに進まなくなる現象が、全国各地で起きている。サンプラザはその象徴だし、大阪・関西万博もそうだ。
しかし建築費に限らず、現在の日本ではありとあらゆるものが値上がりしている。筆者のまわりの企業関係者も、さまざまなコストアップと人手不足ゆえに仕事を請けてもらえない事態が多発していると嘆く。

ただし、今の状況は日本の政策が響いていることは見逃せない。物価は上がっても、賃金も上がるはずだった。しかし実態は、賃金の上昇以上に物価の上昇が続いている。
近所のスーパーに行ってもコンビニでもネット通販でも、数年前よりあらゆる物の価格が上がっている感覚に襲われる。「給料もすこ~しは上がっているけれど、生活は全く楽になっていない」と感じている人が多いだろう。
今夏も値上げ…食品だけでも1万4409品目!
生活に密着した値上げの例として、帝国データバンクによる「食品主要195社価格改定動向調査」を見てみよう。25年の累計品目数はなんと1万4409品目(4月30日時点)に上り、前年実績を上回った。飲食料品の値上げの勢いは前年に比べて強い状態が続いているという。

今まではあまり目立たない存在だった、カレールウなどの香辛料製品やだし製品を中心とした調味料が最も多く(4904品目)、冷凍食品やパックごはんなどの加工食品(3685品目)、清酒やビール、清涼飲料水など酒類・飲料(2759品目)が続く。
今夏はまさに値上げラッシュだ。6月、7月単月で前年を大幅に上回る1000品目超が値上げされた。
また、令和のコメ不足騒動により、代替として小麦のニーズが上昇。小麦そのものは政府の仕切り価格ではあるものの、小麦の加工食品であるパスタなどが値上げされるという。