11月8日、5年に一度開かれる中国共産党第18回全国代表大会が開幕した。2002年から続いた胡錦濤(総書記)体制が終わり、習近平新体制が誕生する。本稿では、新体制の下で中国の経済、政治がどのような方向に向かっていくのか、二つの問いに答えてみたい。一つ目の問いは、中国経済の高成長時代が終焉したのかということであり、二つ目の問いは習近平新体制の下で、中国が本格的に政治改革に踏み切る可能性はどれだけあるか、ということである。
日本総合研究所理事・主席研究員。日総(上海)投資コンサルティング有限公司董事長・主席研究員。ウッドローウィルソンインターナショナルセンター公共政策研究フェロー。1983年中国復旦大学卒業、90年東京大学大学院博士課程修了。日本総合研究所入社後、香港駐在首席研究員、香港駐在事務所所長、ハーバード大学客員研究員、米AEIリサーチフェロー、ジョージワシントン大学客員研究員などを経て、現職。『中国 静かなる革命―官製資本主義の終焉と民主化へのグランドビジョン―』(日本経済新聞出版社)など著書多数
足下の景気減速は一時的か
高成長期の終焉か
まず一つ目の問いから検討してみよう。中国のGDP(国内総生産)は、2010年の第2四半期をピークに、減速が続いている。前回の景気後退は08年のリーマンショックによって引き起こされたが、4兆元に及ぶ政府の景気対策で、09年の第1四半期をボトムにして、V字回復を果たした。今回の景気減速はリーマンショックのときのように急激ではないが、前回よりも長期間にわたって、成長率の低下が続いている(図1)。
PMI(購買担当者景気指数)は、50%を超えると景気拡大を、50%を下回ると景気減速を示しているが、HSBCが発表している中国の製造業PMIは、過去11ヵ月連続で50%を割っている。最近になって、サービス業PMIも急速に低下し始めた(図2)。