トランプと習近平が奪い合う「グリーンランド」、実は“日本こそ”が鍵を握るワケドナルド・トランプ米大統領 Photo:Tasos Katopodis/gettyimages

グリーンランド購入に
執着するトランプ大統領

 2019年、当時のアメリカ大統領だったドナルド・トランプ氏が「グリーンランドをアメリカが購入したい」と公言したとき、世界に大きな衝撃が走った。

 デンマーク政府はこの提案を即座に拒否し、「グリーンランドは売り物ではない」と突っぱねた。

 だが、トランプ大統領による「グリーンランド購入」構想は、当初考えられていたような一過性の冗談ではなかった。トランプ氏は再選後もグリーンランド購入について繰り返し言及しており、「地政学的に極めて重要で、資源の宝庫である」として、この構想を今も諦めていないのである。

グリーンランドは
レアアースの宝庫

 この発言の背景には、レアアース(希土類)という戦略物資の存在がある。

 レアアースの元素は全部で17種類あるが、その中でも「重希土類(ヘビーレアアース)」は特に貴重で、供給が限られている元素群である。

 重希土類は、ハイブリッド車やEVのモーター、風力発電の大型タービン、さらには軍用レーダーやステルス戦闘機にも使われる「レアアース磁石(ネオジム磁石)」を作るのに不可欠な材料である。

 これらの磁石は、小さくても強力な磁力を持ち、省エネルギー化や高性能化の要となっている。

 だが、重希土類の供給は、世界の約70~80%を中国が占めており、アメリカ政府はこの現実に大きな危機感を抱いている。

 実際、重希土類は中国に偏在しており、軽希土類が世界中で採掘できるのに対し、重希土類の採掘は中国とその周辺に集中している。

 米中関係の悪化とともに、「中国がレアアースの輸出を戦略カードとして使うのではないか」という懸念が一部であったが、トランプ政権が相互関税により中国を狙い撃ちにすると、中国はこのレアアースカードをいきなり切った。

 しかも、中国はアメリカだけでなく、世界中に対してレアアースの供給を絞り、欧米の先端産業をはじめとする重要産業に大打撃を与えた。さしものトランプ大統領も、アメリカ側が譲歩する形での合意交渉に乗り出さざるを得なかった。