
台湾をめぐるアメリカと中国の武力衝突を視野に入れ、日本の防衛力整備計画は継戦能力の強化に力を入れている。台湾有事リスクが高まる中、起こりうる最も危険なシナリオとは?――この問題に詳しい米タフツ大学准教授のマイケル・ベックリー氏と筆者が意見を交わした。※本稿は、村野 将『米中戦争を阻止せよ トランプの参謀たちの暗闘』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
中国共産党が台湾への
軍事侵攻に踏み切る「Xデー」は?
村野 将(以下、村野) 日本で台湾問題に対する関心が高まっている理由の1つに、インド太平洋軍司令官をはじめとする米国の軍・情報機関の高官が「2027年」といった具体的な時期を示して、その危機感を露わにしていることが影響しているように思います。
そこで最初に議論したいのは、台湾を巡る危機リスクの時間軸についてです。国際関係論ではいわゆる「パワー・トランジション(力の移行)」を巡る議論の1つとして、国家が冒険主義的な行動に出るのは力に自信をつけているときか、それとも自信を失いつつあるときかという議論がなされてきました。
これに関して、ベックリーさんはハル・ブランズさん(ジョンズ・ホプキンス大学教授)との共著『デンジャー・ゾーン』のなかで、中国の力はすでにピークに差し掛かりつつあり、その力が弱くなる時期こそが危険だという分析をしていますね。
マイケル・ベックリー(以下、ベックリー) 誤解のないよう最初に言っておくと、私たちは中国が現時点で衰退していると考えているわけではありません。私たちは国家を3つに類型しています。すなわち「台頭する国家」「衰退する国家」、そして「ピークを迎える国家」です。