先月、米国医学誌「Stroke:脳卒中(オンライン版)」に日本の国立がん研究センターと国立循環器病研究センターの共同研究結果が報告された。それによると、緑茶とコーヒーを習慣的に飲む人は、脳卒中の発症リスクが低下するという。

 同研究は、1995年と98年に別々に行われた研究の参加者、8万2369人を平均13年間にわたり追跡調査。年齢は45~76歳で、男女比はほぼ半々、参加当時にがんや心血管系疾患の既往はなかったが、追跡期間中に3425人が脳卒中を発症していた。

 研究グループは追跡期間中、参加者の病院記録や死亡診断書などの記録を収集。さらに、アンケート調査でコーヒー(缶コーヒーを除く)や緑茶の摂取回数を記録した。まず、コーヒーの摂取頻度でリスクを分析したところ、「毎日1杯」飲む人は「飲まない」人に比べ、20%脳卒中の発症リスクが低下していた。また、「毎日2杯以上」では19%の低下、「週に3~6回程度飲む」では11%の低下が示された。

 一方、緑茶の摂取頻度では、「毎日2、3杯」で「飲まない」人よりもリスクが14%低下、「毎日4杯以上」で20%のリスク低下が認められた。

 さらに、「緑茶を毎日2杯以上、またはコーヒーを1杯以上」で大脳内の血管が破裂する「大脳内出血」の発症リスクが32%も低下していたことが判明したのである。

 これまで緑茶については、心血管疾患の発症リスクを低下させることが知られてきたが、脳出血を含む脳卒中の予防効果を明示した調査研究は珍しい。

 研究者らは、どの成分が有効だったのかは不明としているが、仮説として緑茶に含まれるカテキン成分の抗酸化作用が血管保護に働いた可能性を指摘した。またコーヒーに含まれる「クロロゲン酸」は2型糖尿病の発症を抑えるため、間接的に脳卒中予防に働いたとも考えられるという。

 うれしいことに緑茶もコーヒーもおなじみの飲み物だ。日常に取り入れるのに問題はない。調査では、緑茶とコーヒー1杯の量が約170グラムで計算されている。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド