スイスのビジネススクール、IMDの日本代表である高津尚志さんから、『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか』を読んで次のメッセージをいただきました。IMDは世界的なビジネススクールで、日本をふくめた各国の多くの企業のグローバルリーダー育成に携わっています。毎年、各国の競争力を独自に分析した「世界競争力ランキング」を発行して多くのメディアを賑わすので、ご存じの方も多いと思います。
世界的ビジネススクールの日本代表の視野には、目的工学はどう映るのでしょうか。
世界と企業が変わりはじめ、
ビジネススクールも変わりはじめた
世界はまさに、紺野さんたちの主張する通りに変わりつつあります。「何のための資本主義か」「企業はなぜ、この世に存在するのか」といった根本的な意味や「目的」を問い直そうとする方向へ大きく動いている、と感じます。
IMD日本代表
1965年年生まれ。AFS奨学生として高校時代にカナダに留学。早稲田大学政治経済学部卒業。フランスの経営大学院INSEADとESCP、東京の桑沢デザイン研究所に学ぶ。日本興業銀行、ボストンコンサルティンググループ、リクルートを経て2010年11月より現職。
IMD学長・ドミニク・テュルパンとの共著に、『なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか』(日本経済新聞出版社)がある。また、リクルート時代には、世界各国で事業を展開する企業の経営理念の共有支援プロジェクトでの経験をもとに、『感じるマネジメント』(英治出版)を編者代表としてまとめた。
http://www.imd.org/country/jp/
この本は、そうした世界の潮流を社会起業家やNPOで働く人たちばかりではなく、一般の企業で働く人たちに向かって書かれている点に非常に大きな価値があります。企業が社会の中で存在し、必要とされるためには目的が重要であるということを、これだけ豊富な事例を交えながら具体的に指摘した本は、これまでなかったように思います。
本書で特に強く印象に残ったことの一つは、ヒューレット・パッカードの共同創業者、デイビット・パッカード氏が晩年に語った、と紹介されている言葉です。
「人々が集まり、企業と呼ばれる機関として存在するのは、個々人がバラバラにやっていては成し遂げられないことを実現するためであり、社会に貢献するためなのである」
21世紀は企業のあり方が大きく変わっていくだろうということを、今、多くの人たちが感じはじめています。IMDでも、「企業はこれから何をすべきか」「企業の姿はこのままで本当にいいのか?」「企業は社会や人類とどのように関わるべきか」といった大きなテーマについて、ずいぶんと議論されています。IMDの学長も、たとえばユニリーバのようなグローバル企業のトップの方々と、そういう根本的な対話をする機会が増えている、と言っています。
WWF(世界自然保護基金)と共同開発して、「地球の中における企業のあり方」「人類にとっての企業」というテーマについて、世界中の経営幹部とともに考えるようなプログラムもスタートしました。