カナダ、オーストラリアとも事前協議がまとまり、日本は7月からTPP交渉に参加する、という。だが、どんな合意に至ったか政府は明らかにしない。日本に不利な条件が盛り込まれた可能性が高い。

 先に合意した米国との事前交渉は、日本車への関税を当面存続することを認めた。カナダ、オーストラリアにも同様の約束がなされたようだ。だが、見返りに日本の農産品に特段の措置がなされたわけではない。つまり、すべての分野が交渉のテーブルに乗る。

得意分野は事前交渉で封じられ
不得意分野は本交渉で「市場開放」

 得意分野は事前交渉で封じられ、不得意分野は本交渉で「市場開放」が迫られる。

 政府内部では「農業5品目の関税をすべて守るのは極めて厳しい」という声が漏れている。安倍首相は「守るべき国益は守る」と繰り返すが、何を根拠にそう言えるのか。

 TPPは事前協議で早くも外交敗北が濃厚になった。取り繕っても不都合な真実はいつかバレる。7月からの交渉参加で、日本の不利益が次々と明らかになるだろう。

「TTPで安倍政権はつまずくかもしれない」。農業議員からそんな声も出始めた。

 政府関係者はこう指摘する。

「5品目のうち何を守るのか。例えばコメを守るが小麦は諦める、という選択を迫られる局面が出てくるのではないか」

 関税撤廃はTPP交渉の一部でしかないが、安倍政権にとって重要な政治案件だ。関税は分類項目が約9300に及ぶが、WTO交渉などでその90%が撤廃されている。TPPでは残る10%をおおむね3%以下まで減らそうという交渉が進んでいる。

 そこまで下げるとなると日本の「聖域」は崩れてしまう、というのだ。