アベノミクスの中核となる金融政策の行方が注目されるなか、4月4日、日本銀行の黒田東彦新総裁が発表した「量的・質的金融緩和」は、まさに「異次元」の形容にふさわしい強烈無比な内容になり、国内外の市場関係者に大きなサプライズを与えた。1ドル=92円90銭付近にあったドル円相場はその後急騰、心理的節目である1ドル=100円の大台を断続的に試すところまで円安が進んだ。
一方で、値動きが激しいのも「アベノミクス相場」の特徴だ。円安のスピードが早すぎることによる反動も出やすくなっている。4月中旬以降、米国でテロが発生、少々残念な経済指標の発表が相次いだこともあり、一時急激な円高・ドル安に振れる場面もあった。経験したことのない未知の相場にチャレンジする投資家たちは、足もとの為替トレンドをどう見据え、何を心得るべきか。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作・チーフ為替ストラテジストに、詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、インタビュー日/4月23日)
すさまじい金融緩和爆弾の威力
予想外だった2つのポイント
――アベノミクスの柱となる「異次元金融緩和」のインパクトで、円安傾向が顕著になっている。円高に慣れ切っている投資家からは、「足もとの展開が読みづらい」との声も聞こえる。為替市場は、今どんな局面にあるのか。
1966年生まれ。大阪府出身。三菱UFJモルガン・スタンレー証券 リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト。1988年野村総合研究所入社。ニューヨーク、ワシントン駐在などを経て、2000年国際金融研究室長。04年野村證券金融経済研究所に転籍、経済調査部・国際金融調査課長、投資調査部長を歴任。09年外為どっとコム総合研究所入社。調査部長兼主席研究官として為替調査に従事、代表取締役社長を兼務。12年三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、現在に至る。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員。
4月4日に日銀の黒田総裁が投下した「金融緩和爆弾」の威力があまりにもすさまじく、「相場環境の急変について行き切れていない」というのが多くの市場参加者の本音だろう。白川氏から黒田氏へのバトンタッチで、金融政策のレジーム・チェンジは早々に起きるだろうと皆予想していたが、今回はあまりにも「予想外」の展開だった。
予想外のポイントは2つ。第一に、とてもわかりやすかったことだ。今回導入された「量的・質的金融緩和」は、2年間で2%の物価目標を達成するため、市場に供給するマネタリーベースを2年間で2倍に増やすという、明確な数値目標を伴っていた。
マネタリーベース倍増計画の実行にあたっては、日銀が買い入れる国債の残高や保有満期を2年で2倍以上に増額、延長するなどの具体策も示された。たぶんわざとそうしたと思われるが、2年、2%、2倍といった具合に、数字の2を並べたところが滅茶苦茶わかりやすかった。