前回のこのコラムで、7月10日夕方、日中関係学会(会長:宮本雄二元駐中国大使)と華人教授会議(代表:杜進拓殖大学教授)の共催により、来日中の馬立誠・元人民日報論説委員を招いて、東京神田にある学士会館でシンポジウムを行ったことを取り上げた。

 馬氏が「現代中国の社会思潮」という演題の基調講演を行ったあと、私はコメンテーターとして、その基調講演に対してコメントを発表した。実は、このコメントの中で、私は中国の現状に触れたとき、10年間の無為無策で、政治改革が遅れ、国民が大きな関心を持つ問題が無視され、解決すべき社会問題が山積し、中国社会は危険な臨界点に近づいていると警鐘を鳴らした。

質的変化が起した瞬間

 シンポジウムのあと、交流を含めた懇話会が催された。そのとき、ある参加者が私を掴まえて質問した。

「先ほど、莫さんはコメントのなかで、臨界点という表現を使って、中国の社会問題を分析したが、この臨界点は具体的に言えば、どういうことを想定しているのか」

 私はこう答えた。

「質的変化が起こる瞬間を指す」

 わずか一週間後、中国の社会問題がその質的変化を起こした瞬間を見せてくれた。