世界的に製造業の生産が上向く今秋以降の商品先物市況は、これまでとは異なる動きを見せるだろう。
これまで上昇が目立った商品は、米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)やガソリンであった。石油の最大消費国である米国の景気堅調で、需要増加が見込める上に、エジプトの政治情勢の流動化という地政学要因も押し上げ材料になった。
一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和の縮小に向かうとの観測が金利上昇と相まって商品市況全般の下押し要因となっていた。トウモロコシや天然ガスは、豊作や冷房需要低迷という天候要因もあり下落率が大きくなった。また、金や銅など金属の下落率も大きい。預金や債券など金利商品との代替性が強い金は、金利上昇で売り圧力が強まった。銅など工業原材料の金属は、中国経済減速が長期化して、需要が伸び悩むとの観測から値を下げた。
しかし、足元では、こうした状況が変化し始めている。まず、FRBの量的緩和縮小のスピードがゆっくりしたものになるとの思惑が浸透する中で、ドル金利が低下し、金市況は1トロイオンス当たり1300ドル台を回復した。
銅の市況も上向き始めている。最大消費国である中国の銅輸入は前年水準を上回ってきており、LME(ロンドン金属取引所)指定倉庫の銅在庫が減少し始めた。背景には、米国景気が上向き米国への輸出増加を通じて中国など各国の製造業の生産を押し上げ始めたことがある。米国の景気回復で世界的にモノの需給を引き締める力が浸透し始めている。新興国を中心に電力関連のインフラ投資が見込まれるほか、米国や日本の住宅着工は回復しており、銅需要を押し上げそうだ。