子どもが伸びるカギは「自己肯定感」にあり!世界の視点で、すべての子どもたちに必要な教育を提供しようと教師を育成し、公教育の現場に送り込んでいるNPOティーチ・フォー・ジャパン代表、松田悠介さん。一方、私立の中高一貫校・品川女子学院の校長で、企業コラボ等、多彩な教育方法で注目されている漆紫穂子さん。一歩先の教育を考えているおふたりに、子どもたちに必要な「自己肯定感」について語ってもらいました。

今の時代に必要な教育とは?

松田悠介(以下、松田) さっそくですが、漆さんは今の時代に必要な教育について、どう思われているのか、おうかがいしたいと思っています。私は今教育は転換期にきているんじゃないかなと思っています。まず、私自身の活動から簡単に説明させていただくと、今、私が代表をつとめているティーチ・フォー・ジャパンは、将来必要な人材を、公立学校などの公教育のプラットホームで育てていくということを目標にしています。

 今年度から本格的に始まったのですが、うちのNPOで採用し研修した人材を、必要だという自治体へ送り公立の教師として2年間採用していただいているんです。学校の中から、教育を変えていきたいというアプローチです。

 教育の転換期だと感じているのは、今まで、つまり明治から昭和の時代までは、「座ってきちんと授業が聞ける子を育てる」マニュアル型の人材育成、かつ大量生産の教育が効果的だったと思うんです。

漆紫穂子(以下、漆) いわゆる「言われたことがきちんとできる」という子ですよね。

松田 そうです。工場で働くとか製造業での現場はその方が効率的ですから。でも今、時代が変わってきて、もっと違う人材が必要なのに学校現場では追い付いていないというジレンマがある。今、ちょうどその過渡期にいるんじゃないかなと思うんです。

漆紫穂子(うるし・しほこ)
[品川女子学院校長]
東京都生まれ。早稲田大学国語国文学専攻科修了後、他校の国語教師を経て、品川女子学院へ、2006年より現職。1989年から取り組んだ学校改革により、わずか7年間で入学希望者が60倍、偏差値が20上昇。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)東アジア会議にも出席。2012年国際トライアスロン連合(ITU)世界選手権スペイン年齢別部門日本代表16位で完走。著書『女の子が幸せになる子育て』は7万部を越えるベストセラー。最新刊『伸びる子の育て方』。現場教員歴約30年の講演は、お母さんだけでなく、お父さんにも大きな反響を呼んでいる。

 確かに、アメリカのデューク大学のキャシー・デビッドソン教授も「2011年度にアメリカの小学生に入学した子どもの65%は、大学卒業時に、現時点では存在しない仕事に就く」と言っていますよね。

松田 今の小学生は、新しい仕事や新しい働き方をするということですよね。

 今回の対談をするにあたって、松田さんの本を読ませていただいて、松田さんがお持ちの問題意識に非常に共感したんです。

 特に、今の子どもたちに、将来、必要な教育を与えられているのか、もう1点、日本の子どもたちは、他国に比べて自己肯定感が低いということです。

30年後に必要な人材を目指している

 今、グローバル人材教育が注目されていますが、私は、ことさら「グローバル」をつけなくてもいいと思っています。広い視野と長い目で教育を考えると、結果としてつく言葉なので。世界の変化の中で、今後、日本がどういった役割をはたしていったらいいのか、その未来から逆算してどういう人を育てたいのかを考えています。

松田 それは、どのくらいの先のことをイメージされているんですか?