ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

世界60ヵ国、200以上の都市を訪れる

 前回、前々回と、とても真面目な記事を書きましたが、今回はまた少し肩の力を抜いて、旅について筆のおもむくままに書きたいと思います。

 さて、プロフィールにも書いてありますが、私は60の国と地域、200以上の都市に滞在したことがあるそうです。「あるそうです」と書いたのは、これだけ多くの場所を訪れると、その全体像はもはやぼやけた形でしか記憶に残っていないからです。

 それらのほとんどは、国外に住んでいた7年間のうちに訪れました。仕事をしながらなぜこれだけの場所を訪れることができたかと言えば、1つに、休日のほとんどの時間を旅行にあてていたからです。そしてもちろん、私が国際経営戦略の仕事と研究ばかりをしてきたことも挙げられます。

 たとえば、シンガポールで戦略を策定していたときは、タイ、マレーシア、インドネシアなどを訪れました。同じように、中国にいたときも、中東にいたときも、アフリカ北部にいたときも、その周辺国を訪れています。

 現地の方々の考え方を理解し、市場を知らなければ、戦略を作れるわけもありません。そのため、半分は仕事、半分は趣味を兼ねて、周辺国を精力的に巡りました。

 研究者としての生活を始めてからも、この姿勢に変化はありません。私の専門分野が国際経営と多国籍企業論であることもあり、現実の最先端を知り続けるために世界を回り続けています。