人口の高齢化による社会保障費の増大は世界各国の共通の課題であり、とりわけ治療薬のない認知症への取り組みは困難を極める。医療だけでは解決できない。どのような対応策が必要か。各国が課題を共有し、共に手を取り合おうと国際会議「サミット」まで開催され出した。

 その中で、先駆的地域が注目されている。英国北部のスコットランドだ。地域を挙げた多くの団体の取り組みで格好のモデルと言われている。認知症の当事者が世界で初めて自らグループを作り、発言、発信を始め、政策にまで関与している。

認知症の人は「知的劣化が進む病気の患者」ではない認知症になった作家、アイリス・マードックの名を被せた認知症研究棟。スターリング大学内で

 その活動を支えるスコットランド・アルツハイマー協会や家族介護者団体の存在が大きい。大学も認知症研究に加わり、認知症の人の住まい環境や生活用品それに人材育成に力を入れている。

 スコットランドを9月に訪れ、現地を回った。前回に引き続き、認知症ケアについて考えていきたい。